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“オレのカッコいい”を語れるデザイン経営郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)

「大企業のクルマ作りでは創造性が加わる余地がない」。そんな不満を持って大手自動車メーカーを飛び出した林田浩一氏。そんな彼がデザインコンサルタントとして夢をかなえたクルマが、チューニングカーの「IDING F460GT」だ。

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夢に近づいたが……

 そして、少量生産のチューニングカー・デザインを行っていたアイディング(当時)に参画する。同社はBMWのチューニングカーで熱狂的なファンを持っており、1991年にはフェラーリテスタロッサをべースにしたIDING F54-SIIIも発表。さらに1995年にはフランクフルト国際自動車ショーへも出展。フェラーリF355をベースとするIDING F365-SIIIとBMW M3をベースとするIDING M3-SIIIの2台を発表し、世界へ向けての発売も開始した。

 ところが当時はバブルが崩壊しており、スーパーカーの購入層が消えていた。そのため、アイディングの事業もいったん縮小せざるを得なかった。

 デザインへの憧れだけではダメ。林田さんはこの経験からデザインと経営を深く考えた。そして“デザインコンサルタント”として活動を始めたのだ。

アートとデザインの間に入るもの


林田浩一さん(撮影:村山桜子)

 「アートとデザインの間に“マネジメント”が入らないとダメなんです」(林田さん)

 デザイナーとは「マネジメントは自分の領分じゃない」と考えている生き物、アートに徹していたいのだ。だがビジネスでは、自分視点ではなく、顧客に受け入れてもらうことが大事。「こういう人に買ってもらいたい。使ってもらって、こんな風に感じてもらいたい」とデザイナーはマネジメントを考えるべきなのだ。

 そして逆に「経営者が“自分のところのカッコいい”を語れることが大事です」と林田さん。

 自社のクルマのカッコよさを語れずに経営はできない。ハマる単語でなくても、「世の中の“あれ”と“これ”を足すとオレのカッコいいデザインだ」と語ってほしい。私はそのコンセプトに“MOD(Management of Design)”と名前をつけた。MOT(Management of Technology=技術経営)のパクリですが何か?(笑)

オレのうれしい=お客さまのうれしい

 F460GTは、“オレたちのカッコいい夢の再挑戦”である。そのボディと腰下は“カッコいいデザイン経営”そのものだ。

 F460GTのお値段は1620万円。べースのF430の2600万円と合わせて4220万円。しかし、金融恐慌のさなかに関わらず3台の予約があるという。カッコいい経営に響いてくれる顧客がいるのだ。


(林田氏提供)

 カッコいいを社長が常に語り、社員がさらに深める。みんなで共有してデザイナーはカタチにする。続ければ“オレのうれしい”と“お客さまのうれしい”が一致する経営になる。それがMODの浸透であり、コンサルタント林田さんの想いでもある。

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