グループ転職は魅力的? 雇う側でも雇われる側でも:山崎元の時事日想(2/2 ページ)
複数人で会社を辞め、新しい会社に転職する「グループ転職」。筆者の山崎氏は過去2回、グループ転職の経験があり、「メンバーのことが分かっているので、新しい職場でもスムーズに仕事ができる」とメリットを挙げるが、デメリットもあるという。それは……?
雇う側から見たリスク
グループ転職では、雇う側から見たリスクも小さくない。
雇う側から見て、グループ転職で注意しなければならない問題は、(1)将来まとめて辞められるリスク、(2)グループのコントロールが利かなくなるリスク、(3)グループのメンバーに「使えない」人材が混じっているリスク、の3つだ。
グループで移って来るということは、出て行くときもグループ単位で出て行く公算が大きいということだ。転職者グループに重要な仕事を任せた場合、将来まとめて辞められて、仕事に大きな穴が開くリスクを抱えることになる。
グループのコントロールも難しい問題だ。証券業界ではトレーディングの仕事で、トレーダーがジュニアトレーダーやアシスタント、さらには分析担当者に、システム担当者、バックオフィス要員まで引き連れて転職する場合があるが、こうしたチームの場合、個々のメンバーは会社に対してよりも、グループないしはそのリーダーに対して強い忠誠心を持っている場合が多く、リスク管理などが機能しにくくなる場合があるし、チームの仕事全体がブラックボックス化することがある。
また、まとめて複数の人材を採用する場合には、優秀な人間だけを採用できるわけではない。グループの中の誰かを採用したいがために、そのほかの人材も採用せざるを得ないという場合もあり、雇う側では損得計算に悩むことになる。
このようにデメリットの可能性もあるグループ転職だが、ビジネスプランを作ってチームを売り込む交渉の過程は張り合いがある。また、採用する側でも「成果」が見えやすいので、リスクを承知していても、グループ単位での採用が魅力的な場合がある。採る側でも、採られる側でも、グループ転職はなかなかにエキサイティングだ。
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