きちんと理解しておきたい! よく聞く「カーボン・オフセット」とは?:環境ビジネス基礎講座(2/2 ページ)
カーボン・オフセット付きの年賀はがきや住宅ローンなど、今や多くの商品やサービスに「カーボン・オフセット」を見かけるようになった。しかし説明しようとしても、できない人も多いはず。そこでもう一度、カーボン・オフセットについて勉強しよう。
企業・政府・消費者の思惑が一致したカーボン・オフセット
カーボン・オフセットは、なぜ世間の耳目を集めるに至ったのか。それは、企業、政府、消費者それぞれのニーズを、巧みに満たしたものであるからと筆者は考えている。
まず、企業にとっては、競合他社と差別化できる、環境配慮型商品の開発につながった。多くの企業が、近年の消費者の環境意識の高まりなどを受け、リサイクル素材の活用や省エネ型商品の開発に取り組んできたが、それだけでは差別化の方向性として不十分になってきていた。
そこに新たな差別化の方法としてカーボン・オフセットが登場したのである。リサイクルや原料の見直しなどをいくら進めても、エネルギー消費などに伴う温室効果ガス排出量を「完全に」なくすことは出来ないが、カーボン・オフセットの考え方を活用すれば、「完全に」この排出をゼロした、「最も環境に優しい」商品・サービスを売り出すことが出来ると考えたのである。
また、政府にとってカーボン・オフセットは、増加し続ける家庭部門の排出量を少しでも抑制する手段として期待されている。カーボン・オフセットは直接、家庭からの排出量を減らすものではないが、相当量の排出権を取得し、それを政府へ寄付※してもらえば、京都議定書の目標達成に役立たせることができるというわけである。
消費者にとっても、カーボン・オフセットはある種の“免罪符”的な位置づけとして、好感を持って受け止めやすい。特に、地球温暖化を深刻な問題と認識している人は、自動車を乗り回したり、頻繁に海外旅行をすることに対し、罪悪感を覚えているだろう。ところが、カーボン・オフセットの商品やサービスを活用すれば、自分の行動によって排出されたのと同じ量の温室効果ガスの削減が何らかの方法実施されるため、罪悪感を払拭し、今までどおりの自由な行動ができるというわけである。
こうして見ていくと、良いことづくしにも思えるカーボン・オフセットだが、これは本当に、地球温暖化の抑制に寄与するのだろうか。次回は、その有効性を詳細に検討していく。
真野秀太(Mano Shuta)
環境・エネルギー研究本部地球温暖化対策研究グループ
排出量取引制度や算定・報告・公表制度等の国の制度設計の業務や、京都メカニズムに基づくプロジェクト発掘・形成に携わる一方、企業への温暖化戦略のコンサルティング業務を行う。
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