体験時間を刻む時計――100年に1度の変をスローデザインで生き抜こう:郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)
100年に1度と言われる金融不安が世の中に暗い影を落としている昨今、新たな生き方が求められている。そんな時代に合うような、ビーズで時を刻む時計を見つけた。
物事のプロセスや起源を考えよう
こうして西洋時計とアフリカン・タイムを融合し、時計の歯車からビーズがこぼれ落ちるデザインが完成した。チクタクという機械的な時に突き動かされて何かをするのではなく、1つずつ体験(=ビーズ)を積み重ねていく“自分時計”だ。
自分の体験時間を刻む時計。どこか“スローデザイン”のコンセプトに通じている。そこで「スローデザインとは何か?」と尋ねてみた。彼女は「スローデザインを意識してデザインはしませんが」と前置きをしつつ語った。
ソルン 『clock』のデザインを通じて、スローデザインを考えるようになりました。それは、やることをスローにするという意味ではなく、私たちを取り巻く物事のプロセスや起源をもっと考えようというアプローチです。
西洋型経済システムはあらゆるものを簡単に、安く、早く消費者に届けようとしてきました。それで得たことも大きいのですが、一方で品質を犠牲にしてきました。スローデザインとは、解決策をスローダウンさせるものではなく、西洋の消費者へ“じっくり考えませんか”と語りかけるメッセージなのです。私の『clock』がスローデザインにフィットすると感じる人がいるのは、西洋社会のシスティマチックなペースを追うだけが生き方ではないと表現しているからでしょう。
自分独自のビーズを持とう
スローデザインが求めるのは、供給者視点の目標を消費者視点の目標に変えることでもある。「GDP」「利益成長率」「株価」など供給者の指標から、「自然資源の利用率」「河川浄化率」「ワークシェアリング実施率」、さらに「ボランティア参加回数」など生活者の幸福指標を大切にしてみよう。100年に1度の変にもがく消費者を幸せにする指標を持つことは、新たなビジネスチャンスにもなるだろう。
これから政治も事業も個人生活も大きく変わる。顧客満足度を示す尺度も変わるだろう。しかしそれは、これまでのシステムをすっかり見直す好機だ。年末年始に自分の『clock』のビーズを見つめ、スローな想いに浸るのもいいかもしれない。
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