ケータイでクルマを借りる――カーシェアリング「careco」スタート
会員制で、短時間でも安く手軽にクルマを利用できる「カーシェアリング」に、三井物産の100%子会社が参入した。1月22日にサービスを開始した「careco(カレコ)」は東京の恵比寿や代官山からスタート。エコカー・コンパクトカーをそろえ、新しいカーシェアリングサービスを目指している。
会員になっておけば、短い時間でも安く手軽にクルマを利用できる「カーシェアリング」。1月22日、新しいカーシェアリングサービス「careco(カレコ)」が東京でスタートした。
クルマを“借りる”サービスといえばレンタカーを思い浮かべる人が多いだろう。カーシェアリングではレンタカーより短い時間でも、クルマを使いたいときだけ借りることができる。例えば「30分だけクルマに乗りたい」といった使い方も可能だ。また、会員制で運用するのも、レンタカーとの大きな違いといえる。もともとは欧州で普及しているシステムで、日本ではオリックス自動車の「プチレンタ」などが知られる(参照記事)。
カレコを運営するカーシェアリング・ジャパンは、三井物産の100%子会社だ。日本のカーシェアリングサービスとしては後発となるカレコは、どこが特徴なのか。副社長・広報担当の鈴木大山(だいせん)氏に話を聞いた。
まずは都心部からスタート、23区で営業
カレコのステーションは、東京の恵比寿、代官山、中目黒に7カ所設置されており、1月22日現在は7台のクルマが稼働している。初年度は50〜70ステーションでクルマ100台程度、5年後はクルマ1000台で会員2万人の獲得を目指す。
「ステーションを置くエリアは、都心からスタートしました。当面は東京23区を中心に展開します。(カレコの)ユーザーとして、トレンドに敏感な方、環境意識の高い方を想定しているからです。carecoという名前は“car+eco”で、ecoにはecology、economy両方の意味があります」
利用できる車種は、トヨタ自動車「プリウス」「iQ」や、ホンダ「Fit」など。今後はホンダのハイブリッドカー「インサイト」や、スバルの電気自動車「ステラ」なども導入を予定しているという。「ハイブリッドカーやコンパクトカーを揃えています。小さいクルマといっても、軽自動車にはどうしても、安全性の点で不安を覚えたり、ちょっと安っぽさを感じたりする方がいらっしゃるので、軽自動車は置きません」
携帯のような料金体系、マイカーのように使ってほしい
料金の基本プランは、入会金が4980円、月額基本料金が1980円。あとはクルマを利用すると、30分ごとに650円の時間料金、1キロメートルあたり20円の距離料金が加算される。ガソリン代も利用料金の中に含まれる。
基本プランのほかに、9800円コース、1万9800円コース、2万9800円コースといった料金プランを用意しており、たくさん乗る人のほうが安く利用できる仕組み。「毎月どれくらいクルマを利用されるか、先に利用時間を聞いておいて、それに合った料金プランをおすすめするようにしています。ちょうど携帯電話料金のような感覚です」
他社の場合、短い利用時間だとカーシェアリングで、長い時間の場合はレンタカー、とすみ分けていることも多い。しかし鈴木さんは「30分でも、2〜3日でもcarecoを使ってほしい。マイカーのような感覚で乗ってほしいのです」と話す。
ちなみに事故を起こしてクルマを破損した場合、利用ステーションまで自走してクルマを戻せれば2万円、戻せない場合は5万円の補償金を支払うことになる。
携帯1つで利用が可能
利用を促進するには、会員の“使いやすさ”が重要になってくる。かつては会員がノートに使った時間を書き込んで管理していたというが、現在のカーシェアリングサービスでは、会員がICカードを持ち、そのカードを使って会員認証を行うのが一般的になっている。
しかしカレコではICカードを会員に配布せず、携帯電話のみで利用できる点を特徴としている。使い方は以下の通りだ。
- PCや携帯でカレコのサイトにアクセスし、使いたい時間に予約を入れると、会員に携帯メールが届く。
- 会員が携帯から、メールに書かれたURLにアクセスすると、利用開始ボタンが現れる。
- 利用開始ボタンを押すと、サーバと車載器が通信を行い、クルマのロックが開く(ここから課金が始まる)。
- 助手席側のドアを開けるとキーが入っているので、それでクルマを運転する。
取材中、鈴木さんが何度も繰り返していたのは「カーシェアリングがかっこいい、という価値観が広まることがブランディングのために大切」ということだった。
「クルマを持つ人は、これからどんどん減っていきます。間違いない。そのうち、『えーっ、都内でクルマなんか持ってるの?』という感覚が普通になると思うんです。そのために、カーシェアリングをもっと広く普及させなくては、と思っています」
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