向谷実氏が考える鉄道と音楽(後編)――発車メロディというビジネス:近距離交通特集(1/5 ページ)
九州新幹線、京阪電鉄に続き、阪神電鉄の発車メロディも手がけた向谷実氏。1日に何百回と“演奏”される発車メロディは、著作権の扱いや契約方法も一般の楽曲とは変わってくる。向谷氏はアーティストとして、どのように発車メロディというビジネスをとらえているのだろうか。
向谷実(むかいや・みのる)氏。株式会社音楽館代表取締役、人気フュージョンバンド「カシオペア」のキーボーディスト。4歳半からオルガンを、5歳からピアノを習い始め、6歳で既に作曲を行っていたというたぐいまれな才能を持つ。熱烈な鉄道ファンとしても知られる
「カシオペア」のキーボーディストにして、リアルな鉄道ゲームソフト「トレインシミュレータ」の開発者でもある向谷実氏。その向谷氏がここ数年作曲家として取り組んでいるのが駅の「発車メロディ」だ。九州新幹線の発車メロディや車内放送メロディに続き、京阪電鉄の発車メロディを作曲して話題になっている。
インタビュー前編では、京阪電鉄の発車メロディの話題を中心に、向谷氏が考える“あるべき発車メロディの姿”についてうかがった。後編では、向谷氏の鉄道関連ビジネスと、「アーチストが作品を会社に納品する」というビジネスについて、著作権問題なども含めて聞いていく。
→向谷実氏が考える鉄道と音楽(前編)――発車メロディ3つのオキテ
向谷氏のファンは2つのタイプに分けられる。1つはカシオペア以来の音楽ファン。もう1つはトレインシミュレータ以来の鉄道ファンだ。2008年秋に発売された「京阪電車発車メロディコレクション」は、鉄道ファン向けのアイテムだが、音楽ファンからも注目されているという。
アーチストならではの新たなビジネス
「音楽ファンからは、“駅の発車メロディだけを収録しているだけ”“鉄道ファン向けのCD”だと思われていたらしいです。ところが、アレンジバージョンを4曲も収録していて、それらはちゃんとした楽曲になっている。“こんなカッコイイ曲が入ってるの”“どうして宣伝しないの”と音楽のファンが怒ったらしい(笑)。
確かに、アレンジバージョンの4曲目なんて、めっちゃロックなんですよ。最初の駅から加速して、次の駅で制限速度があるので少しスピードを落として――そういう鉄道の要素を入れて、音楽的には行ったり来たりという感じが続きます。そうすると音楽ファンは欲しくなっちゃう。だけどこのCDは京阪電鉄の駅でしか売っていないんです。“なぜ全国で発売しないのか”という声も寄せられたと聞いています」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.