週刊誌の記事が“羊頭狗肉”になる理由:出版&新聞ビジネスの明日を考える(3/3 ページ)
週刊誌の記事が、どのようにしてできるのかをご存じだろうか? ときに世間を震撼させる週刊誌の記事は、記者・アンカー・編集者という“分業システム”によって、仕上がっていくという。
当然、担当編集者には電話で抗議した。しかし、編集者は悪びれもせず、挙げ句は「いいんですよ。面白ければ」と反省する様子もない。後日、ノック氏と出会った私は、ゆでダコのように真っ赤な顔で怒る知事から10分近くも罵倒されてしまった。私も言い訳ができず、うなだれて聞くしかない。編集者が勝手に手を入れた原稿とはいえ、書かれた本人にすれば、実際に取材した記者に矛先が向くのは無理からぬ話だろう。
週刊誌の“分業システム”
実は一部の週刊誌を除いて、記者がすべての記事を書くわけではないのだ。編集者が原稿に手を入れ、最終的に皮肉っぽいひねりの利いた記事を書くのは、アンカーと呼ばれるプロの書き手サンである。この“分業システム”によって、週刊誌の記事はできあがっていく。そのため記者は、取材で得たデータを簡潔に書き送るだけでよい。極端な話、箇条書きでもいいのだ。商品となる記事に書き直すのは、編集者とアンカーの仕事である。
だから編集者が取材対象に悪意を持っていれば、記者の意図など無視して、事実をねじ曲げることも可能なのだ。記者といっても出版社の正社員ではなく、いわゆる“派遣”のようなもの。正社員の編集者に睨まれたら仕事が回ってこない“恐怖”もあるので、渋々、彼らに従っていることだってある。
しかし編集者に任せて、ゲラのチェックを怠った私にも落ち度があった。事前に読んでいれば文句の1つもつけられたのだ。むろん、その後はゲラは念入りに見直し、取材に基づかない内容や誤った事実があれば削ってもらうよう、ときにケンカしながら編集者には申し入れている。おかげで今では仕事も激減したが……。
だが、その『F』だって、そんな編集者ばかりではない。記者と二人三脚で、世紀の大スクープを放ち、一流メディアを慌てふためかせる記事も書いてきたのである。
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