「要するに」というのは、要注意!
会話をしていて「要するに○○でしょう」と言ってはいないだろうか? 逆に「要するに○○……」と聞くことも多いのでは。この「要するに……」たとえそれが要領を得ていても、“浅い聞き方”かもしれない。
著者プロフィール:泉本行志(いずもと・たかし)
サンダーバード国際経営大学院卒業(MBA取得)。外資系大手経営コンサルティングファーム、外資系大手IT企業、ベンチャー企業での事業立ち上げを経て、株式会社アウトブレイン社を創業。現在はロジックと感情を融合した思考法を活用し、事業アイデアの立案・戦略策定・業務改善コンサルティング、問題解決手法の教育プログラムを開発・提供している。ブログ「Knowledge Bridge (知見を繋ぐ・感情を伝える〜)」
「要するに○○ってことでしょ」
私たちコンサルタントは、物事を一般化してパターン認識するのが好きな人種らしく、人の話を聞いて、最後にこうまとめたい欲を抑えるのが難しいようです。
しかし、相手の話したことの要点をうまいこと抽出し、一般化しまとめることは、常によい結果をもたらすとは限りません。
まず対話において、話し手が一生懸命にいろいろな説明を交えて説明するも、最後に相手から単純化されて「要は○○ってことでしょ」と言われると、たとえそれが要領は得ていても、何か不満感が残るかもしれません。そして、何よりも、いつも「要は○○でしょう」で済ませる習慣(反応)は、聞き手の持ち得る世界観を制限してしまいます。
「要するに○○……」とは浅い聞き方
私たちは、無意識レベルにおいて、心の中で「メンタルモデル」を形成します。これは、私たち1人1人が心で持っている内的な世界観のことです。そして、現実の外的世界から五感を通じて知覚した情報は、そのメンタルモデルで理解できる形にフィルタリング・歪曲された上で受け取られます。
同じように、意識レベルでも、私たちは自分の既に知っている過去の情報と照会しながら、物事を理解しようとします。「要は○○」というのも、相手から聞いた話を一番近い自分の経験・知識にアクセスして、そこから抽象化してまとめる行為をしているに過ぎません。
最近注目されているオットー・シャーマー氏の「U理論」においても、人とのコミュニケーションにおける聞き方の深さに関して、4つのレベルがあると説明されています。
(1)ダウンローディングする (Downloading、既に知っていることを再確認している聞き方)
(2)事実に基づく (Factual、自分にとって新しいデータに焦点を当てる聞き方)
(3)共感・感情移入する(Empathic)
(4)生成的(Generative)
「要するに○○……」とは、このうちの、まさにレベル1の浅い聞き方である「ダウンローディング」に過ぎません。
この聞き方だけでは、聞き手はこれまでの枠組みから脱する機会を失ってしまう可能性があります。より深いコミュニケーションで、相手との対話から深い気づきや創造的な発見・生成を起こすには、「要するに……」と自分の知っているものとの照合による理解だけでは十分ではありません。
「要は○○……」と言いたくなったときに、そこでまとめてしまうことで新たな気付き・発見という価値を失う可能性があることを思い出しましょう。試しに「要するに……」「要は……」をしばらく禁止してはどうでしょう。(泉本行志)
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