なぜイマドキの新入社員は「おはようございます」と言えないのか?
ビジネスパーソンにとって“あいさつ”は基本中の基本。しかし某企業の新人研修に招かれた際、筆者はあることに違和感を感じた。それは新入社員から“あいさつ”の言葉が出なかったこと。なぜ彼らは「おはようございます」と言えないのだろうか?
答えや正解を待ち、自ら考えようとしない。マニュアルを求め、自ら見つけようとしない。そんな傾向が高い今どきの新入社員。その原点の一部が“あいさつ”から感じられました。
今年も何十社というクライアント様から、新入社員研修の依頼をいただき、フル回転中の毎日ですが、某企業様の新人研修の初日にこんなことがありました。
研修初日は入社式の翌日。研修開始前〜スタート〜小休けい〜昼食休けい〜と、なんだか違和感がありました。考えてみると、「おはようございます」「よろしくお願いします」「お疲れ様です」「失礼します」「ありがとうございます」など、あいさつの言葉が彼らフレッシュビジネスパーソンたちから一切出ていなかったのです。
もちろん、私からは「おはようございます」「よろしくお願いします」「お疲れ様です」と節目節目に発しました。中には、その言葉に反応して、言葉を返してくれるフレッシュビジネスパーソンも何人かはいました。でも、自ら率先してあいさつする姿が見受けられません……。
よくよく観ていると、社内の研修担当者や採用時からの顔見知りである人事担当者には、自ら挨拶や声かけをしている姿が見当たります。そこで、午後の研修開始時に、彼らに聞いてみたのです。「朝から半日、ご一緒していますが、皆さんから挨拶の声がかからないのが、私としては不思議です。何か理由があるのですか?」
すると、ひとりが答えてくれました。「知らない人には、自分から声をかけるものではないと思います」。答えてくれた方を含め、複数の方の話を聞くと、彼らは子どものころから「知らない人に声をかけたり目を合わせたりしてはいけない」と大人に言われ続けて育った過程があるとわかりました。研修担当者や人事担当者は“知っている人”で初対面の私は“知らない人”ということです。
あいさつの定義が違う
「あいさつができない」のではなく「あいさつの定義が違う」のです。
確かに、今の社会では、小学生や幼い子たちに、“知らない人に声をかけたり目を合わせたりしてはいけない”と教育するのが常識の1つかもしれません。その認識を前提にした世代が、今、社会人として一歩踏み出す時期になりつつあるのです。
ということは、ビジネスルールやモラルを彼らが使いこなせるように、伝承していく使命が私たち先輩ビジネスパーソンにあるということです。それらは、もちろんマニュアルや型ではなく、Whyを明確にした発展形として進化していくものですから、その伝承も一筋縄では行きそうもありません。
その日の研修では、あいさつの意味・目的・シチュエーション別使い方など、時間を割いて行いました。研修修了時には、積極的なあいさつと、何よりも、社会にデビューする・仕事をするということに対しての果敢な姿勢が見受けられ、その柔軟さに期待感を持ちました。(山岡仁美)
著者プロフィール:山岡仁美(やまおか・ひとみ)
株式会社グロウス・カンパニー+ 代表取締役、人材育成コンサルタント、研修講師、講演と多方面で活躍中。そのテーマは「リーダーシップ」「コーチング」「ネゴシエーション」「CS・CRM」「キャリアデザイン」「ダイバーシティ」など幅広いとともに、あらゆる業種・職種・職能にカスタマイズし展開。 ほかに各種マニュアル・スクリプト製作・CSプロジェクトナビゲート・ CI制作・店舗検証など実績豊富。著書『デキる人になれるアサーティブ仕事術』
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