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コラム

一次産業を、かっこよくて感動があって稼げる3K産業に――みやじ豚.com 宮治勇輔さん嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(1/5 ページ)

神奈川県は藤沢で飼育されているブランド豚「みやじ豚」をご存じだろうか。「一度食べたらほかの豚肉は食べられない」と胸を張る社長の宮治勇輔さんは、SFC出身の30歳。年商6800万円、養豚業では利益率トップを誇るみやじ豚の強さとは?

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嶋田淑之の「この人に逢いたい!」とは?:

 「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で目標に向かって邁進する人がいる。会社の中にいるから、1人ではできないことが可能になることもあるが、しかし組織の中だからこそ難しい面もある。

 本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現するビジネスパーソンをインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。


 清潔感あふれる明るい豚舎。彼が手を伸ばすと、子豚たちが一斉に集まってくる。その人懐っこさが何とも愛くるしく、思わず微笑みがこぼれてしまう。「愛情こそが何よりも大切なんです」と“彼”は言う。

 昨今の日本の産業界における重大テーマの1つに「後継者難」がある。1次産業、2次産業、そして3次産業の別なく、全国各地の中堅・中小の事業者の間で、後継者難が深刻化している。日本中で「事業承継」を掲げたセミナーが開催され、新聞・雑誌でもたびたび特集が組まれているが、それらが効果を挙げたという話はあまり聞かない。

 後継者難。この難題に対して、1つの明確な「解答案」を身をもって提示した人物がいる。その人物こそ、今回の主役であり、上記の豚舎の人物である宮治勇輔さん(30歳)だ。


株式会社みやじ豚の社長、宮治勇輔さん

一次産業を、かっこよくて・感動があって・稼げる3K産業に

 「その産業の『在り方』自体に魅力がないから、後継者難が起きる。だったら、魅力ある産業へと変革すればいい」

 そう考えた宮治さんは、「一次産業を、かっこよくて・感動があって・稼げる3K産業に」を自らのミッションに掲げ、業界革新ののろしをあげた。

 神奈川県藤沢市ののどかな田園地帯。彼の母校・SFC 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパスに程近いところで、宮治勇輔さんと弟の大輔さんは養豚業を営んでいる。

 このあたり一体の豚肉は、「高座豚」として知られるが、宮治さんのところの豚は、「みやじ豚」。そして、この「みやじ豚」は、肉好きを唸らせる格別の美味さと、業界革新への宮治さんの高い志とが相まって、クチコミであっと言う間に広まった。今では、都心のビジネスパーソンの日常会話にもしばしば登場するくらいの存在感を獲得している。

 「農家としては4代目、養豚業としては2代目に当たります。年商は6800万円ほどで、養豚業としては大した売上ではありませんが、利益率はトップクラスではないでしょうか」と静かに語る宮治さんだが、彼の志す「業界革新」に対する世間の反響はとても大きかった。宮治さんは、今や、講演講師、あるいは生産農家のブランディング、マーケティングを促進・支援する「農業プロデューサー」として、全国各地を飛び回る日々である。

「豚の飼育は、弟がいるからできるんですよ」

広々と清潔な豚舎(左)。豚の飼育は弟の大輔さんが担当している。養豚業を始めて数年で農林水産大臣賞を受賞した大輔さんの実力を誰よりも評価しているのは、兄の勇輔さんだ(右)
豚舎の豚たちは驚くほど人懐っこい(左)。大きな農場では30頭前後を一緒に飼うのが一般的だが、みやじ豚では「いかにストレスなく豚を育てるか」を重視して兄弟豚だけを10頭前後同じ部屋で育てる「腹飼い」を実践している(右)
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