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コラム

一次産業を、かっこよくて感動があって稼げる3K産業に――みやじ豚.com 宮治勇輔さん嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(4/5 ページ)

神奈川県は藤沢で飼育されているブランド豚「みやじ豚」をご存じだろうか。「一度食べたらほかの豚肉は食べられない」と胸を張る社長の宮治勇輔さんは、SFC出身の30歳。年商6800万円、養豚業では利益率トップを誇るみやじ豚の強さとは?

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「みやじ豚」のビジネスモデル、そして成功要因とは?

 生産農家と生活者の互いの顔が見える農業経営実現をうたう宮治さん。直販比率は売上全体の5割くらいに達するという。内訳としては、東京と地元湘南地域を中心に、イタリア料理店などのレストランが9割、インターネット通販が1割だという。「レストランは、店舗数で言うと、50〜60店舗になりますね」

 みやじ豚の美味さの要因とは何だろうか?

 「養豚の世界は、通常“血統6割、餌3割、環境1割”と言われます。しかし、私たちはその中でも特に環境を大事に考えており、ストレスフリーな状態で育てることに力を入れています」

 みやじ豚は、品種的には三元交配種というごく一般的なものであり、飼料は麦類を豊富に活用しているが、そこまで特別なものではないそうだ。「でも、愛情は日本一だと自負しています」という言葉そのままに、豚たちを想い、ストレスのかからない快適な環境を用意して、丹精込めて飼育しているのだろう。そして、それこそが、美味さの秘訣になっているのかもしれない。

 「バーベキューを通じて思ったことなんですが……」と前置きして、ここまで躍進できた理由を、宮治さんは述べてくれた。「(1)美味いこと(2)ネーミング(3)ストーリー(4)販売チャネルの絞込み、という4つのファクターが揃ったことにあると思います」と。

 (1)は大前提だ。どんなに理念が立派でも、肝心の味が感動的でなければお客もつかない。

 (2)については、これまで食肉の世界では、牛・豚・鶏の別なく、ブランド肉にはすべて地域の名前がついていた。松坂牛・神戸牛・佐賀牛、薩摩黒豚・東京X(エックス)、比内地鶏・名古屋コーチンなどなど……そういう中にあって、みやじ豚は生産農家の実名をそのままブランドにしている点で画期的であり、かつ、それを購入するサイドからすれば、「安心・安全」という信頼感を持ちやすい。

 (3)に関しては「なぜ美味しいのか、そして、どうして、その仕事に携わっているのかということが大切」と彼は言う。

 最後の(4)は、出荷したらハイ終わりという旧来のやり方ではなく、チャネルを絞り込んで、消費者の口に入るまでのプロセスをコントロールできることが肝要なのだという。

 そして、自らの活動が日本社会に広く受け入れられる要因を次のようにも語った。「農耕民族としての日本人の心に訴えかけているからだと思います。日本人は資本主義的生産様式の限界に気づき、日本の伝統に回帰し始めたんだと考えています」

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