サントリーの新製品「ZOOCE」の狙いは何だ?:それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)
「動物園のようにワクワクする、みんなの炭酸飲料」がコンセプトのサントリー「ZOOCE Sparkling フルーツパレード」。サントリーにしては珍しいマーケティング手法だが、この飲料……一体ターゲットは誰なのだろうか?
懐かしのラムネ味に似せた狙いとは
「ラムネとサイダーの違い」。ググってみれば分かるが、ネット上でも百家争鳴である。
諸説あるが、その出自や語源に言及はされているが、味に関する明確な定義は発見できなかった。ゆえに、ZOOCEを炭酸カテゴリーの中で明確にラムネ味と定義できる論拠はないのだが、大事なのは、「どこか懐かしく感じる味」であることだ。懐かしい感じが筆者にはラムネを想起させた。
誰にとって懐かしいのかと言えば、「親世代」だ。かわいいパッケージに引かれ、子どもが「ズース、ズース」とせがむ。「子どもに炭酸が飲めるか?」と思いつつ、購入する。最初に親が試しに飲んでみる。炭酸が弱いので、大丈夫と判断して子どもに渡す。が、試し飲みの時点で、「懐かしい味」にしっかり親もハマる。子どもがせがめばまた買ってやるだろうし、かわいいパッケージは母親なら、そのかわいさにもはまって自分買いもするだろう。
つまり、親子二面作戦だ。うーん、何という巧みな戦術。
消費者の購買に至る態度変容モデルはAIDMAが有名だが、AMTULというモデルもある。Attention(注意)→Memory(記憶)と、ここまではAIDMAと同じ。続いてTrial(試用)→Usage(日常的使用)→Loyalty(ファン化)となる。つまり、ZOOCEはAMTULのステップを狙ったものではないだろうか。
パッケージが目に止まる→記憶する→子どもにねだられ試し買いする→親子ではまって買い続ける→ZOOCEファンになるという巧みな設計である。
チャレンジャーはリーダーの10倍アタマを使わなければ生きていけない。ましてや、新製品で生き残れるのは1000に3つといわれる飲料業界だ。サントリーのZOOCEには、深謀遠慮が感じられる。
ZOOCE、1000に3つを生き抜いてほしい。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサ ルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダ イヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディ アへの出演多数。 一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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