新聞は一度、バカと言われる側に回ってみてはどうだろうか?(2/2 ページ)
新聞の購読部数減少に歯止めがかからない状況だが、原因はどこにあるのだろうか。インターネットの出現や景気などにも左右されているかもしれないが、新聞は一度「バカだと思われている側」に回ってみるのもいいかもしれない。
「腐っても新聞」というプライド
2009年2月に「ネット通販での医薬品販売規制強化」のニュースが、世間を賑わしたのを覚えている方も多いと思う。厚生労働省は、リスクの低い医薬品の販売のみに限定した「薬事法施行規則等の一部を改正する省令」を2月6日に公布。今年の6月からは、ビタミン剤や消化整腸剤など一部の薬品を除いて、ネットや通販では医薬品が買えなくなることに対して、ネット販売業者や通販業者から異論が出ているという内容のものなのだ。
どう贔屓目(ひいきめ)に見ても、新聞の報道はネット販売業者の方を悪として捉えている。この問題の対立の構図はきわめて明解で、薬局店や薬剤師の団体が厚労省に圧力をかけてネット・通販への規制をさせたもの。医師会だの看護協会だの薬剤師会といった団体は自民党を支援しており、自民党政府としては彼らが有力な票田なので要求は無視できない。よって、自民党よりの新聞は、「ネット=悪」の側にまわす。ネット購入したクスリで異常が出たなどの小さな告発記事を、このタイミングに流すことに躍起になる。
読売オンラインに掲載されている『楽天・三木谷氏「結論ありきでは」』というニュースでは、以下のように書かれている。
「一方、全国薬害被害者団体連絡協議会の増山ゆかりさんは『障害を持つ方は本来、薬のリスクが高いはずで、医療機関で専門家と接点を持って購入するのが望ましいのではないか。ネットで買うことの危うさも知ってほしい』と話した。」
と、書かれている。記事の構成と内容に、厚生労働省寄りの意図が働いているのは隠しきれていない。
私ごとであるが、2007年の末、某新聞社が新聞の朝刊に折り込む地域密着のフリーペーパーのようなものを発行したいというので相談に乗ったことがある。会議に行ったら、そのフリーペーパー発行の責任者は、団塊世代の元編集員。どんな内容にしたいのか、その意図はあるのかと聞くと「今はフリーペーパーが盛り上がっているから新聞社も、そういうものをしなくちゃいけないようだから」という。そう言ってる割にはその会議に、地元で発行されているフリーペーパーを持って来ている者すらいない。誰も、地元の競合フリーペーパーをベンチマークしていない。危機感ゼロ。残念な気持ちになった経験がある。
その会議で感じたのは、新聞社の方々の「フリーペーパー」や「インターネット」に対する蔑視である。そこで繰り広げられている情報のやりとりへの、嫌悪感である。「腐っても新聞」という、プライドである。地方ほどこういう傾向は強いかもしれない。
バカだと思われている側
メディアが貴重な時代で、みんなが同じように見ていた新聞やテレビには、憧れがあったし、その主張はほぼ額面どおり受け取られていた。どんなことでも、新聞で書けばオーソライズされていた。また、オーソライズされたいとも思っていた。それが、マス媒体の想定していた大衆だ。
しかし、ネットの出現によって個人が自由に情報発信できるようになった。従順なマスも、少なくなっただろう。
うちの娘達は、よく姉妹喧嘩(けんか)をする。喧嘩の最後はお決まり。下の娘が「バカっていう方が、ほんとのバカなんだからね」と決まり文句を吐いて、泣く。
そうなのだ、バカと言った方が、バカなのだ。「バカと言われる側」「バカだと思われている側」の方が、「バカ」に一番、敏感なのだ。
インターネットの出現は、「一番てっぺんのバカ」を炙(あぶ)り出す役割を担っている。「一番てっぺんのバカ」にならないためには、どうすればいいのか? 一度「バカと言われる側」「バカだと思われている側」にまわることである。新聞やテレビにそれが可能か……はなはだ疑問だけど、期待している。(中村修治)
関連記事
- 相次ぐ出版社破たん、出版不況を抜け出す術はあるか
年間8万点もの新刊が出版される中、つい数年前に話題作を世に出した出版社までもが続々と破たんしている。もはや良い本を出せば売れるというのは幻想で、本の洪水にのまれないように売る戦略、売り場の改革が必要ではないか。また、将来の読書人口を増やすために、教育の役割も重要だ。流通と教育の面から、出版不況を抜け出す術を探った。 - 「活字離れ」はウソ?――本当に本は売れていないのか
「本が売れない。雑誌が売れない。だから活字離れだ」といった論調を聞いたことはないだろうか? こうしたステレオタイプの意見には穴があることが多い。そこで筆者の森田氏が“穴探し”を始めると、意外な事実が明らかに。 - なぜ『週刊現代』と『週刊ポスト』の部数は凋落したのか?
「週刊誌」と聞いて、「派手な見出しと薄い内容」「度肝を抜くスクープ」などをイメージする人も多いだろう。しかし週刊誌の代表格『週刊現代』と『週刊ポスト』が部数を急減させている。紙面の内容はあまり変わっていないような気もするが、なぜ部数が落ち込んでいるのだろうか?
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.