なぜ週刊誌は訴えられるようになったのか?:集中連載・週刊誌サミット(3/3 ページ)
『週刊朝日』の山口一臣編集長はこれまで、何度も訴えられてきたが、一度も“負けた”ことがない。かつては記事のクレームに対し、話し合いで解決してきたが、最近はいきなり訴えられるという。その背景には何が潜んでいるのだろうか?
今の時代は“情報デフレ”
もう1つ……これは情けないのだが、訴訟で何百万円、何千万円支払うとなると、本当に厳しい。若い人たちが週刊誌を買わない理由は「内容がつまらないから」だと思う。読む気がしないのかもしれない。週刊誌が面白くないのは私たちの責任だが、信頼性があって面白い情報にはお金を出して買ってほしい。
実は以前、学生からこのように言われた。「新聞社のWebサイトはユーザーにフレンドリーじゃない」と。どういう意味かと聞いたところ「どんどん記事が削除されていき、過去記事を検索できない。有料サイトだと読める。やはりタダでないとダメ」と言っていた。
週刊誌や新聞の記事もそうだが、その記事を書くために人件費や取材経費などのコストがかかっている。このことを分かってほしい、と言ったところ「いやあ、どのWebサイトを見ても情報はタダだけど、新聞社だけはフレンドリーじゃない」という。では君はどこに就職が決まったのか、と尋ねると「NHK」だと答えた(笑)。NHKは強制的に受信料を集められるので……(笑)。
メディアが出している情報は、基本的に(情報を集めるために)お金がかかっている。なので、できればお金を払って読んでいただきたい。今の時代は“情報デフレ”がはなはだしい。『週刊朝日』でも大手のポータルサイトに情報提供しているが、いくらくらいかご存じでしょうか? ワンクリック0.025円しかないのだ。
泣き言といえば泣き言かもしれないが、1つはメディア規制と訴訟、もう1つは情報デフレ、この2つの脅威にさらされる中で、日々暮らしている。
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