『アサ芸』を追い詰める極道、司法、部数減……。残された道はアレしかない:集中連載・週刊誌サミット(2/2 ページ)
極道、エロ、スキャンダルを売りにしている『週刊アサヒ芸能』。他の週刊誌と同様、部数減に悩まされており、この10年で半減した。“逆風”が吹き荒れる中、元編集長の佐藤憲氏はどのような巻き返しを図っているのだろうか?
世間を騒がす、それしかない
もう1つ……極道からのプレッシャーがある。ゴルフで例えると、彼らはOBを打ってもボールをフェアウェイに持っていき、プレーを続けてしまうようなもの(笑)。つまり彼らの理屈というのは、私たちの理屈とは相反する。そこの“折り合い”をつけることが重要になってくる。
某関西の親分と山口組幹部の盃(さかずき)に関する記事を書いたが、盃の中味について間違えてしまった。そして激烈な抗議が来た。いつもなら女性の裸が掲載されているページに、「『お詫び』を掲載しろ!」と言ってきた。これに対し我々は頭を下げたというつもりはないが、これしか解決方法はなかった。(なぜこのような解決方法になったかというと)実は別の雑誌が同じような「お詫び」をしており、彼らはそれを見て「同じようにしろ!」「この通りにしろ!」と言ってきた。これに対し、我々は抗しきれなかったのだ。
いずれにしても私どもの場合は裁判の場であったり、極道の連中からのプレッシャーであったり、日々そういったものと戦いながらやっている。もちろん部数もかなり落ち込んでいて、お金がないとなかなか思い切ったこともできない。これは事実だ。やはり部数が30万あったころは記者の人数も、取材費もそれなりに使えた。しかし今はそういうわけにはいかない。どうしても紙面の中味は寂しいものにならざるを得ない。
ただ、やり方だと思う。ウチのようにこれくらい部数が落ち込んでくると、守りに入ってやる必要がまったくない。世間を騒がす……これしかない。週刊誌の使命の1つは、世間を騒がすということだと思う。後輩には「世間を騒がしてくれ」と言っている。
週刊誌の部数の推移(単位:万部、出典:シンポジウム資料)
雑誌名 | 1990年 | 1995年 | 2000年 | 2005年 | 2008年 |
---|---|---|---|---|---|
週刊朝日 | 45 | 39 | 32 | 22 | 17 |
サンデー毎日 | 25 | 21 | 13 | 9 | 7 |
週刊アサヒ芸能 | 33 | 31 | 22 | 18 | 12 |
週刊新潮 | 54 | 53 | 52 | 52 | 44 |
週刊現代 | 56 | 73 | 65 | 50 | 26 |
週刊文春 | 63 | 68 | 64 | 58 | 51 |
週刊ポスト | 70 | 84 | 66 | 45 | 30 |
週刊大衆 | 23 | 26 | 36 | 24 | 21 |
週刊プレイボーイ | 68 | 51 | 42 | 34 | 22 |
SPA! | − | − | − | − | 11 |
関連記事
- なぜ週刊誌は訴えられるようになったのか?
『週刊朝日』の山口一臣編集長はこれまで、何度も訴えられてきたが、一度も“負けた”ことがない。かつては記事のクレームに対し、話し合いで解決してきたが、最近はいきなり訴えられるという。その背景には何が潜んでいるのだろうか? - 相撲八百長疑惑の記事に4290万円。しかしまだ戦える――『週刊現代』加藤晴之前編集長
スクープを追い続ける週刊誌にとって、訴えられることは“日常茶飯事”の出来事なのかもしれない。賠償請求総額が24億円を超える『週刊現代』の加藤前編集長は、訴えられることについてどのように考えているのだろうか? - 編集長は度胸がない+愛情がない……週刊誌が凋落した理由(前編)
発行部数の減少、名誉棄損訴訟、休刊……雑誌を取り巻く環境はますます厳しくなっている。そんな状況を打破しようと、“週刊誌サミット”が5月15日、東京・四谷の上智大学で開催された。第1部の座談会に登壇した、田原総一朗氏や佐野眞一氏らは何を訴えたのだろうか? - 弾圧を恐がり、“感度”が鈍い編集者たち――週刊誌が凋落した理由(後編)
週刊誌が売れない原因は、どこにあるのだろう。そのヒントを見つけ出そうと、“週刊誌サミット”が5月15日、東京の上智大学で開かれた。第1部の座談会に登壇した、田原総一朗氏や佐野眞一氏らは何を語ったのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.