あなたはもう食べましたか? ハワイのソウルフード……マラサダ(前編):嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(5/5 ページ)
マラサダという食べ物をご存じだろうか? ふわっとした食感で、砂糖をまぶした揚げパンのようなものであり、ハワイのソウルフードとして知られている。そのマラサダを販売する日本の第一人者・神谷亮廣さんに、ハワイや商品に対する思いなどをうかがった。
来店客の気分を高揚させる演出
「ファッションとBGMにもコダワリがあるんです」と神谷さんは言う。
しかし、その徹底したハワイアンなファッションゆえに、一騒動持ち上がったことがあるそうだ。
「ある政令指定都市のターミナル駅直結の超有名百貨店で催事があり、招へいされて出店した時のことです。ウチはハワイのローカルな雰囲気がウリですから、当然、スタッフ全員、オリジナルTシャツ、短パン、ビーチサンダルという“いでたち”で営業していたんです。そしたら、その百貨店の経営幹部の人たちが視察に来ましてね。我々のファッションに激怒したんですよ(苦笑)」
ハワイの人々のライフスタイルを再現して、なぜ激怒されなければいけないのか?
「要するに、格調高く品の良いその百貨店のイメージに合わないということのようでした。『ここをどこだと思っているんだ!』といった剣幕でした。
それで一計を案じて、そういう『偉い方々』が視察に見える時だけ、ビシッとした服装で営業し、彼らがいなくなったら、すぐにTシャツ、短パン、ビーサンに着替えるようにしたんですよ」と言って大笑いする。
BGMに関しては、今の日本の世相をうまく反映させたコダワリがあるという。
「不況が続く中、熱烈なハワイフリークであっても、経済的な面がネックになってハワイに行けなくなっている現実があります。なので『ハワイの今』を実感していただくために、ワゴン販売を始めたころから、ハワイのインターネットラジオを流しているんです。DJ+音楽をリアルタイムで流すことで、ハワイにいるような気分になってほしいんですよ。それも観光客向けの嘘っぱちなハワイではなく、リアルなハワイのロコの雰囲気で」
神谷さんのそんな熱い想いが伝わるのだろう。マラサダワゴンも、全国の百貨店での催事も、横浜のカフェ フラハワイも、大盛況の日々である。
しかし冒頭で述べたように、神谷さんの現在の成功は決して一朝一夕でなし得たものではない。
そこで来週の後編では、神谷さんのこれまでの波乱万丈な人生模様と、日本におけるハワイビジネスの将来について紹介する。(続く)
嶋田淑之(しまだ ひでゆき)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
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