茅ヶ崎で名を轟かせた“ワル”だった……日本にマラサダを持ち込んだ男(後編):嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(6/6 ページ)
映画『ホノカアボーイ』で火がついたハワイ名物のマラサダ。そのマラサダを日本で販売している神谷亮廣氏とは、どのような人物なのだろうか? 後編では彼の人生とマラサダビジネスについて、紹介していく。
将来は、茅ヶ崎に自分の店を持ちたい
茅ヶ崎に自分の店を持ちたいという神谷さん。人がたくさん集まる湘南海岸ではなくて、あえて茅ヶ崎を選ぶ理由は何だろうか?
「私自身のルーツが茅ヶ崎ということもありますが、湘南海岸にお店を出すというのは、あたかも観光客向けに出店するのに似たイメージがありまして。私はもっとロコの日常生活に根ざした感じを目指したいんですよ。小さな、私1人でまかなえる店にしたいですね。マラサダ+ロコモコ+コナビールを基本とするメニュー構成で、3年後くらいに実現したい。
日本とハワイの関係は、変化していくはずです。日本からハワイへの旅行客数はすでに減り始めていますし、今後も減っていくでしょう。でもその代わりに、行く人々のハワイへの想いは逆に深まっていくと思うんです。ですから、これまでのような観光客相手の表面的なハワイではなくて、もっとロコの日常生活に密着したものが盛んになると思うんです。私も店を出すに当たっては、そうした点を大切にしていきたいと思っています」
では今後、ビジネスの原点になったワゴン販売は止めるのだろうか?
「いいえ、マラサダワゴンは現在も稼動していますし、今後も続けます。こうした移動販売は1日4万円くらいが成功ラインと言われていますが、マラサダワゴンは1日10〜15万円くらいになっています。でもそれ以上に重要なのは、このワゴンがマーケティングリサーチに有効だということ。どのエリアだと食いつきがよいとか悪いとか分かるのです」
ハワイへの想いとは
ハワイに対する恩返しとか、貢献という面では何か考えているのだろうか?
「最近の日本人は、ハワイをパワースポットとかヒーリングスポットなどと言って、ハワイの人々の宗教的な、そして神聖な場所にまで平気で足を踏み入れたりしています。しかし、こうした行為は止めるべきだと思っています。
私個人としては、ロコが日常生活の中で口にしているハワイのソウルフードをもっと日本に紹介することを通じて、フードビジネスでの文化貢献をしたいですね。今、ひとつ考えているのは、タロイモでビジネスはできないだろうか、ということです。
私は『身に着けているものの輝き』基準から『目の輝き』基準へと、自分の人生を変えてくれたハワイの素晴らしさを、もっともっと世の中に広めていきたいんですよ。それも、私の身上である『スマートな泥臭さ』でやっていきたい」
揺るぎのない神谷さんの想いと青写真―― 。「きっとハワイと日本の架け橋として、素晴らしい貢献を実現するであろう」――そう思わずにはいられないインタビューであった。今後のますますの活躍に期待したいものである。
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