ソ連版スペースシャトルって知ってる? 価格1ユーロの「ブラン」を見てきた:松田雅央の時事日想(2/3 ページ)
米国のスペースシャトルは知っていても、ソ連版スペースシャトル「ブラン」を聞いたことがあるという人は少ないだろう。今回の時事日想は月着陸40周年にちなみ、ブランを展示するドイツのシュパイヤー技術博物館を紹介する。
スペースシャトルのコピーとも言われるが
さて、シュパイヤーに安住の地を見つけたブランは、よく「スペースシャトルのコピー」と称されるが本当のところはどうなのか。
ブランの実用化はスペースシャトルに4年遅れたものの、計画は1960年代から始まっており、ソ連側によれば「当時の技術ではどこの国が開発しても似たような形になるはず」。また、スペースシャトルのオービター(宇宙船本体)に推進用の大型ロケットが装備されているのに対し、ブランのオービター後部には逆噴射ロケットしか装備されておらず、打ち上げ時は大型ロケット・エネルギアにぶら下がって軌道まで運ばれるなど、設計思想はかなり異なっている。
両シャトルの歴史をさかのぼればナチスドイツが開発を夢見た宇宙空間爆撃機「ゼンガー」に行きつくから、スペースシャトルとブランの発祥はドイツであるということもできる。
間近で見るブランは圧巻だ。計器類が取り外され多少のくぼみや傷はあるが、機体状態は非常に良好で博物館の広報・ハンドリッヒさんによれば「多少修理すれば飛べる」ほどだという。ただし、ブラン002の仕上げはかなりラフで、正直なところ想像していたものとは開きがある。機体腹部を覆う耐熱パネルには所々数ミリの隙間が開き、主翼前面の金属パネルの張り合わせも完璧ではない。主翼内部の構造もシンプルに感じられた。
ヨーロッパ最大の私立博物館
ドイツにある技術博物館で最も有名なのは、ミュンヘンの「ドイツ博物館」(1925年オープン)だ。実物を大胆に展示し内部を歩ける体験型博物館の原型とされ、このシュパイヤー技術博物や、その姉妹博物館「ジンスハイム自動車&技術博物館」も展示様式をそれに倣(なら)っている。
例えばシュパイヤー技術博物館にはボーイング747の実機が空中展示されている。内部だけでなく主翼上を歩けるようになっており、揺れる主翼の上は正直言って怖い! またジンスハイム自動車&技術博物館には航空ファン垂涎(すいぜん)の的、コンコルドとソ連版コンコルド「トゥポレフTU-144」が並べて展示され、常に長蛇の列が伸びている。
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