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コラム

「辞めますカード」に効果はあるか?(1/2 ページ)

会社員をやっていると辞表を叩きつけたくなることや、辞表を盾に交渉をしようと思ったことのある人は少なくないでしょう。辞表を会社に出すとどのようなことが起こるのでしょうか?

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著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた)

RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。


 会社員をやっていて辞表を叩きつけたくなることは1回や2回ではないのではありませんか。また中にはテレビドラマみたいに、「辞めます」と辞表を出したところ、「ふざけるな!」と大門部長刑事※に一喝され、辞表をビリビリ破かれ、慰留されるなんてことを想像する方もいるかもしれません。辞表を会社に出すとどのようなことが起こるのでしょうか。

※大門部長刑事……テレビドラマ『西部警察』で渡哲也氏が演じていた刑事。

 正確に言いますと「退職願」「退職届」「辞表」の意味は異なりますが、実質差はありませんし、法律ではタイトルより実体、つまり中身が重要です。これらの定義は本旨ではありませんので割愛します。めんどくさいので辞表にしましょう。

 通常は直属の上司に提出するのが一般的です。役員や社長にいきなり、というのはほぼカミカゼアタックみたいなもので、そもそも会社員としての常識を疑われてしまいます。

 上司は基本的に部下の管理責任を持っています。つまりリストラでもないのにどんどん社員に辞められては組織維持が出来ないわけで、「辞めさせない」ことは、重要な管理職責任です。ただし、「辞めさせたくない」のはやはり会社貢献度の高い優秀な社員であり、問題社員やリストラ社員がばしばし辞めて行った場合には、その上司はむしろ会社からの覚えはめでたくなるかも知れません。

 ですからご自身が会社にとって「必要」度が高ければ高いほど、「辞めます」カードは効果が高まるわけです。実際にあった例ですが、ある企業では業績不振からリストラをしていました。その対象となった方が、理不尽な会社のやり方に腹を立て、辞表を事業本部長に叩きつけたのです。

 突然現れた一担当に、普段顔を会わせることも無い事業本部長は驚きましたが、さすがに管理部門一筋のツワモノ。「あなたのお気持は重く受け止めます」と丁重にその辞表を受け取りました。

 当然、その担当の方は退職条件交渉もなく、辞表通り自己都合退職の手続きが進んでいきました。事業本部長は労せずして最大の結果を得ることができ、さぞ喜んでいたのではないかと想像します。その担当の方は辞表をバーンと叩きつけた爽快感に、すべてを使い果たしてしまったわけです。何もその後の報酬を得ることなしに。

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