カーシェアリングはクルマ社会の賢い知恵……有効利用するカギは?:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
メルセデス、BMW、フォルクスワーゲンなど、ドイツの自動車メーカーを知らないという人は少ないだろう。しかしそんな“クルマ大国”でも最近ではカーシェアリングが注目されている。そこでドイツのカーシェアリング事情に迫った。
カーシェアリングを生かすには
カーシェアリングをより有効に利用するカギは公共交通や自転車といった他の交通機関との連携である。自宅からクルマが置いてある場所まで歩いて数分とは限らないから、そこまで行く交通手段が必要だ。また近くに置かれていない特別な車種(例えば引越しに使えるような中型バン)は遠くへ取りに行かなければならないが、そこが辺ぴな場所であればこれも困る。
このような事情からシティー・モバイルの車は極力、トラム(路面電車)の停留所近くや駅の近くに配置されている。停留所や駅に隣接するパーク&ライド駐車場にカーシェアリングのクルマが多く置かれているのはそういう事情による。
公共交通にとってもカーシェアリングとの連携にはメリットがある。サービス向上につながるだけでなく、自家用車中心だった市民のライフスタイルを「公共交通+カーシェアリング」へ誘導できるかもしれない。こういった視点からシティー・モバイル社とカールスルーエ交通連盟は業務提携を結んでおり、シティー・モバイルの会員であれば公共交通の年間チケットが1カ月分割引になる。カーシェアリングは公共交通機関との連携があってこそ本来の力を十分に発揮できる。シティー・モバイル社の会員はすでに市の人口の1%を超え、毎年0.1ポイント近い割合で増加を続けている。
カーシェアリングは単なる“反”クルマ社会の道具ではない。形はどうあれドイツは今後も間違いなくクルマ社会であり続け、カーシェアリングはその新たな可能性を示してくれる。カーシェアリングは無駄なクルマの所有や利用を減らす賢いクルマ社会の知恵である。
1ユーロ≒139円
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