朝日新聞の記者はそんなにスゴイの? 日本の常識と世界の非常識:上杉隆×ちきりん「ここまでしゃべっていいですか」(2/2 ページ)
ジャーナリスト・上杉隆氏と社会派ブロガー・ちきりんさんの対談7回目。ある日、朝日新聞のスター記者とニューヨークタイムズ東京支局長が一緒に食事をすることに。しかし食事を終えた東京支局長は退屈な様子。その理由は……?
日本の勝ち組は世界の負け組
ちきりん 特に“勝ち組”と呼ばれる人に、客観的な視点を持っていない人が多いですね。新卒のときに勝ち組企業に就職すると、そのままずっとそこで働き続けるので、彼らは1つの視点しか持っていない。
いろんなことを経験した人たちから「世の中こうなんだよ」と言われても、彼らからすると「お前らはどうせ負け組。オレたちのような安定した大企業で働くことができなかったんだろう!?」といった“色メガネ”で見る傾向がありますよね。
上杉 日本社会での勝ち組って、世界の常識でいうと負け組なんですけどね。
ちきりん 確かに。
上杉 以前、朝日新聞のある有名記者と、ニューヨークタイムズ東京支局長が一緒に食事をする機会がありました。その記者との食事が終わったあと、支局長はこう言ったのです。「彼との食事の時間は退屈だった」。なぜですか? と聞くと「彼の何がスゴイのか分からない。彼は朝日新聞のスター記者だというが、そんなにスゴイ記者であれば、なぜフリーにならないんだ?」と。
日本でいれば、朝日新聞で記者をしていることがスゴイことかもしれないけど、世界のジャーナリズム界ではそうは思われない。フリーこそが頂点です。
ちきりん 日本ではマーケットに評価されることの大切さを、理解していない人が多い。なので会社や業界の中で評価されることを気にしているけれど、マーケット……つまり部外者には「どうせオレのことなんか評価できないだろう」といった考えを持っていますね。しかし大切なのはマーケットに評価されることによって、「1人前」と呼ばれることだと思う。
上杉 『官邸崩壊』を出したとき、周囲の人からは「小説みたいだ」と言われたんです。官邸内部のことを書くのだから、コメント部分をカギカッコで書いてしまうと、誰が言ったのか分かってしまう。だからカギカッコをはずして、わざと小説タッチで書いた。そうすると「この書き方だと、賞は取れないよ」と言われた。だけど繰り返すが、僕は賞を取るためではなく、読者にとって面白い書き方を選んだだけのこと。
日本の場合は、インナーサークルで知りえた内情を取材もせずに暴露して、ジャーナリズムの賞を取る傾向がありますね。
ちきりん 何に評価されたいのか? という座標軸が、彼らと上杉さんは違いますよね。多くの記者は自分の会社の論説委員になることとか、ナントカ賞を取ることにしか興味がないのかもしれない。
上杉 僕のところにも毎年のように、いろいろなジャーナリスト組織からの入会の案内が届きます。けど、いつもその場で捨てています(笑)。(続く)
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