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コラム

経費ゼロに耐えられるか……記者は自腹取材で鍛えられる相場英雄の時事日想(2/2 ページ)

広告不況や部数減などの影響で、取材経費を削減するメディアが増えてきているという。記者や編集者あがりの経営陣が考えていることといえば、“引き算経営”のことだけ。いずれやってくる人員削減に、記者や編集者はどのように対応すればいいのだろうか。

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 本コラムの第1回でも触れたが、経営センスゼロの各社トップたちが取る最初の行動は、手っ取り早い経費削減だ。既に残業代やタクシー代、備品に至るまでを減らせと言っているはず。取材にかかる飲食費などはもってのほかという事態は、すぐ目の前に迫っている。

 だが、こうしたケチケチ作戦は現場の士気を下げるのみで、目立った効果を出せない。広告に依存し、左うちわでやってきた記者上がりの素人経営者に今般の難局を乗り切るのは所詮(しょせん)ムリなのだ。取材経費削減の次にくるのは、他の業界と比較して割高な水準に放置された人件費、つまり若い記者諸君の給与に他ならない。それでも業績が上向かなければ、人切りに発展する。従来、聖域とされてきた領域にメスが入るのは必至だ。

持ち出し取材で得るもの

 ここまで、上から目線でネガティブな話ばかりをしてきたが、持ち出し取材は悪いことばかりではない。

 まず、ネタに対する執着度が格段に上がる。自腹で取材するのだから、筋を読み違えたり、まして他社に抜かれたら相当にこたえるからだ。取材対象者にもこうした心構えは確実に伝わる。「真面目にやっている奴だから、ひとつ手助けしてやろうか」とネタ元との人間関係も好転するはずだ。筆者の場合、こうして距離を縮めたネタ元とは既に十数年のつきあいが続いているほか、家族ぐるみの関係になったことも少なくない。

 自腹取材でネタ元とベタベタするつもりはない。そう感じる人も多いだろう。ただ、ネタを追っかけることが好きで記者、あるいはメディア業界に身を投じたならば、今回の大不況は会社の看板で仕事をしてきた姿勢を見つめ直す良い機会になるはずだ。それでもイヤだというのであれば、記者や編集者といった変な職業に執着する必要はない。他の職種をお勧めする次第だ。

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