コラム
リーマン・ショックから1年……世界経済に新たな暗雲も:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
リーマン・ショック以降、常に懸念されているのが貿易摩擦だ。かつて保護貿易主義によって大恐慌を深刻化させたが、今回の経済危機では世界各国は保護貿易主義に陥らないことで合意している。しかしここにきて、米国と中国で不穏な動きが出てきた。
常に懸念される貿易摩擦
中国製タイヤに対する課徴金は、米国の鉄鋼労組の働きかけによるものだが、こうした課徴金によって、米中両国がより広い「貿易戦争」に落ち込む可能性もあると見る専門家もいる。フィナンシャルタイムズによるとIMF(国際通貨基金)で中国部長を務めたこともあるカーネル大学のエスワール・プラサド教授は「こうした保護貿易的手段は、実際に貿易を制限するというより国内の政治的ポーズであるだけに、割と簡単に全面的な対立に発展しやすい。そうなれば両国にとって深刻な影響が出る」という。
ちょうど1年前に金融危機が表面化して世界経済が急激に収縮して以来、貿易摩擦は常に懸念されていた。1929年の大恐慌はまさに保護貿易主義によって危機が増幅された結果であるからだ。今回の危機では世界各国が保護貿易主義に陥らないことで合意をしているのに、米国の課徴金は確かに問題なのかもしれない。この貿易紛争の成り行き次第では、世界経済に新たな暗雲が生じる可能性もあり、目が離せない。
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