コラム
古都ハイデルベルクの街づくり:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
観光地であるとともに、魅力的な地域として発展してきたドイツのハイデルベルク。建物の老朽化などさまざまな問題を抱えてきたが、どのようにして活性化を成し遂げてきたのだろうか。
しかし、詳細な街づくりプランを策定してはみたものの、その実効性や効果には疑問が目立ち、試行錯誤の時代が続いた。ハイデルベルク市・街づくり局のヨアヒム・ハーン課長によれば「当時、5000ページにも及ぶ街づくり計画を立てた自治体もありましたが、一部の専門家を除いてそれに関心を示す市民は皆無でした」。街づくりのビジョンを市民に示し理解を得るという基本的な姿勢が伴わず、市民感覚を欠いた上からの政策に陥ったのではないかと想像する。
1980年代に生まれた新しい街づくりの潮流は「フェスティバル効果」。簡単に書けば、注目を集めるプロジェクトを起爆剤として街全体のイメージ向上と活性化を図る手法である。
続く1990年代は「街づくりのルネッサンス期」。市民活動の積極的な活用、街づくりの手法の進歩、街づくりの効果を定量的に評価する手法の開発など、街づくりは新たな段階を迎える。ハイデルベルクはミュンスター、デッサウとともに街づくりのパイロットプロジェクト都市に選定され注目を集めた。ここでは詳細を述べないが、街づくりに市民活動をうまく活用しているのもハイデルベルクの特徴だ。
古都の街並みこそが実は最高の観光資源になり、その保存と都市住環境の向上は相反しない。今でこそ当然とされるこんな考え方を、街づくりのパイオニアとして証明してくれたのがハイデルベルクである。
1ユーロ≒133円
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