電子マネーパイオニアの苦境――ビットワレット「Edy」の今:10期連続赤字は免れるか?(5/5 ページ)
FeliCa電子マネーのパイオニアとしてEdyを運営するビットワレットは、創業以来赤字経営から抜け出せずにいる。電子マネーの普及が進んでも黒字化が難しいのはなぜか? 同社CSO宮沢和正氏のインタビューを通して、ビットワレットの今とこれからを考える。
ポイントシステム「Edyでポイント」
Edyのポイントシステムは「Edyでポイント」といい、おサイフケータイのEdyアプリと、他事業者のポイントシステムを連動させて使うようになっている(参照記事)。具体的には、おサイフケータイでEdyを使うたびに、ANAのマイルや楽天ポイント、Tポイント、ヤマダポイントなどの中から好みのポイントがたまる(ユーザーが事前に選択してアプリに登録しておく)という仕組みだ。
宮沢氏はEdyのメリットを「自分の好きな(ポイント)サービスと組み合わせられる柔軟性、中立性。使える場所の多さ」と説明するが、柔軟性の高さがユーザーにとっての分かりにくさになってしまっている点は否めない。おサイフケータイでEdyを使っているユーザーの中でさえ、Edyでポイントの知名度はあまり高くないのが現実だ。
さらに他事業者に頼るこの仕組みは、ポイントを運営する事業者が何らかの理由でポイントプログラムを変更した場合、とたんにユーザーからそっぽを向かれる危険がある。かつてEdyのヘビーユーザーは、飛行機に乗らずにANAのマイルをためたり(いわゆる“陸マイラー”)、Edyをチャージしたときにクレジットカード会社が付けるポイントを目当てにEdyを使ったりしていた。しかしANAがマイレージプログラムを改訂し(参照記事)、改正貸金業法の影響でクレジットカード各社の業績が苦しくなり(参照記事)、ユーザーへの利益還元を絞るようになると、陸マイラーたちがEdy離れを起こしたことは記憶に新しい。
Edyは“愛される電子マネー”を目指すべき
「中立性を重視し、多くの企業と手を組める電子マネー」というスタイルを、創業以来約10年守り続けているビットワレット。黒字化するためには手数料に続く新しい収益の柱を育てることが必須だが、それまでの間はせめて、ユーザーに対してEdyを使うメリットを分かりやすく示すことが火急の課題だろう。自社がカードイシュアにならず、決済手数料を収益の柱とするというビジネスモデルが変わっていない以上、Edyはユーザーから“愛される電子マネー”になり、決済件数・金額を伸ばしていかなくてはいけないからだ。
ビットワレットはこれまでのように加盟店のほうばかりではなく、Edyユーザーの顔を見て、その声をしっかり聴かなくてはならないだろう。「なぜEdyを使うのか?」「ほかの電子マネーにはない、Edyだけの良さとは?」この問いにはっきりと答えられる人が増えない限り、ビットワレットの黒字化は望めまい。
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