お年寄り天国がやって来る:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
今後、日本はお年寄りに優しい国になると予測する筆者。その理由はなぜなのか。そして実際に、お年寄りに優しくなった日本ではどのような変化が起こるのだろうか。
お年寄りにやさしい国、日本
資本主義って偉大です。規制やお役所が邪魔さえしなければ、ニーズのあるところに新事業は生まれます。また、これらのビジネスは“大金持ちのお年寄り”向けではなく、より数の多い“一般のお年寄り”をターゲットにして開発されるでしょう。
どうやって低価格化するのかって?
日本は何でも高スペックで高価格すぎるんです。米国ではDVDプレーヤーの売れ筋価格は日本よりかなり低いです。日本人は「いいもの」を欲しがりすぎる。でも、年をとったら、そんな複雑な商品は要らないでしょ。簡単操作でシンプルで安いモノ、そして大きな文字で書いてある説明書が付いてくるようなモノ。すべてに“ほどほどの品質でほどほどの値段”という市場が現れると思います。
そういえば最近は、駅などにエレベーターの設置が進んでいます。「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称、バリアフリー新法)が2007年に施行されたことから、公共交通機関は足腰の弱いお年寄りがスムーズに電車やバスを利用できるよう整えることが求められているからです。
これは国にとっても大事なこと。公共交通機関が利用できれば自分で出かけられるし、働いたり、消費しようという気になる。バスや電車に乗るのが難しくなると、引きこもりがちなお年寄りも増え、ひいては医療費や介護保険の増大にもつながりますから。
あと、そのうち「電動アシスト自転車」の進化版のような乗り物ができても不思議じゃないですよね。電気自動車と電動車いすと電動アシスト自転車を混ぜて3で割ったみたいな商品。そして歩道の横に「お年寄り用電動車いす専用道路」ができるとか。
だって町を出歩く人の半分が「足腰が弱っている人」になるかもしれないのです。反対に歩道橋みたいに、お年寄りに厳しいものは消えゆく運命にあるでしょう。
飛行機も今は「小さなお子さま連れのお客様」は優先搭乗できますが、「70歳以上の方の優先搭乗」が始まるのも、そう遠くないんじゃないの?
実際、日本は今どんどんお年寄りにやさしい街になろうとしています。それは、インドや中国に行くとよく分かります。ああいうお年寄りの比率が低い国は、今はまだバリアフリーにお金を使うよりは、新しいビルや大型施設を建てるのにお金を使いたいという経済ステージにいます。
若い人は気が付きにくいかもしれませんが、エレベーターやスロープが増え、宅配をするスーパーも増えている。日本の街作り、ビジネスの作法は大きく視点が変わりつつある、と最近よく感じるちきりんでした。
というわけで、これからお年寄りの方は安心して老後を迎えてください。
そしてすでにお年寄りの方は?……長生きしてください!
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。
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