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『咲-Saki-』『鋼の錬金術師』の田口浩司プロデューサーが語る、儲かるアニメの作り方劇的3時間SHOW(5/6 ページ)

『咲-Saki-』『黒執事』などのアニメ化を手がけたスクウェア・エニックスの田口浩司氏は10月6日、JAPAN国際コンテンツフェスティバルのイベント「劇的3時間SHOW」に登場、出版社が利益を確保するためのアニメプロデュースの方策について語った。

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海外でコミックが売れない理由

田口 海外に行くと、(日本のアニメは)非常に注目はされています。7月の第1週にパリのJapan Expo、第3週にサンディエゴのComic-Con Internationalというイベントに行ってきたのですが、お客さんが10万人以上来てくれて、非常に食いつきも良かった。しかし、コミックというビジネスだけを考えると、もうかっていないんですね。『鋼の錬金術師』を放映した後、全米で一番売れたコミックは『鋼の錬金術師』と『NARUTO』だったんです。でも、売れる部数は日本の20分の1から10分の1ぐらいでした。


Japan Expo公式Webサイト

 「これは何でだろうか?」と考えました。1つには、印刷物ですから刷り部数が少ないと単価が高くなってしまうということがある。米国のコミックは大体、8ドル99セント〜12ドル99セントなんです。2つ目に、子どもにあまりお金を持たせないということがあります。あっちの方がお小遣いが少ないんです。3つ目は場所的な問題です。東京周辺に住んでいる方は自転車で自宅近くを回れば3軒ぐらい本屋がありますよね。向こうはないんです。週末にショッピングモールに親と一緒に行って初めて買い物ができる。そんな環境があるので、テレビアニメが非常に人気があっても、商品を買うまでに中々いかないという問題が起きています。

 このままだと日本のコンテンツビジネス、コミックビジネスが伸びていかないという中で、あの手この手を考えました。単価の問題やエリア的な問題と話しましたが、それを考えると有料配信しかないかなと思いました。

 そこで、2009年の東京ゲームショウで発表したのですが、集英社、講談社、小学館、角川、うちが出資してリブリカという会社を作って、まずはプレイステーション・ポータブル(PSP)でコミックを有料配信して読めるというビジネスをやろうかなと思っています。日本ではこれだけ本屋もあるし単行本の価格も安いので、あまり広がらないと思います。ただ、欧米の場合には本屋がないということと、配信することによって原価が低く抑えられて、日本と同じぐらいの値付けができることから、買ってもらえるのではないかと思っています。

 映像の方も今はDVDやBlu-rayが主流ですが、将来的には配信になっていくというのは流れとしてしょうがないと思っています。その中でどうやって利益をとっていくかということを真剣に考えていかないと「ちょっとこの業界危ないな」という部分があります。ただ、ニーズがある以上、対応のしようがあるはずなんですよね。出版社やテレビ局、DVD販社やアニメスタジオなどが一緒に話せればいいのかなと思っています。

 (コミックの有料配信は)多分ここ2、3年が勝負だと思います。最終的にはiPodやDSでも読めるようになる、というのもありうるのではないのでしょうか。最初は携帯電話でも見れるのではないかと思ったのですが、欧米の携帯電話のスペックが日本ほど上がっていかなかったんですね。向こうの人は日本みたいに携帯でゲームをあまりしないので。それがあったので、ちょっと時間がかかったのですが、とりあえずPSPで海外配信は攻めていこうと考えています。

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