覚せい剤中毒からどのようにして更正できたのか?――杉山裕太郎さん(後編):嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(6/6 ページ)
岐阜県内の暴走族総長に“就任”した杉山裕太郎さん。しかし自己肯定感を持てず、覚せい剤中毒に陥ってしまった。覚せい剤中毒の日々を送る中、杉山さんはどのようにして更正することができたのだろうか?
「癒やし」の歌声で、訴え続ける日々
「キャラに似合わず、癒やし系の歌声だと言われているんですよ」と照れ臭そうに語る。そこで、筆者も、実際に杉山さんのアルバム「SOUL VOICE」に耳を傾けてみた。
なるほど、ゆったりとしたメロディーだ。1つ1つの曲に人生とか社会についての杉山さんならではの強いメッセージ性があり、しかも、メロディアスで心に残りやすい楽曲に仕上がっている。このアルバムは(1)ALIVE、(2)Believe in、(3)君が星になった日、(4)under world、(5)君のもとへ、(6)コトバ、(7)Out of tune、(8)Life is journey、(9)エコライフ、(10)Find a way 、(11)絆――というラインアップ。
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筆者個人としては、「Life is journey」が曲、詞ともに今の自分の心にぴったり来て印象深かったけれども、一般的には「コトバ」が注目されるだろう。なぜなら、杉山さんが、親の一言で、その深い愛情に気づき、更正できたことを象徴する楽曲内容だからだ。その歌詞をご紹介しよう。
この国は幸せの出し惜しみをしている
もっと 思っている事 ストレートに出してみようよ
別に罪じゃないのに勘違いしないで
親子だって 恋人だって 友達だって
もっとコトバで理解(わか)りあえばいい
※気持ちいいくらい素直なコトバで幸せ与えよう
照れないで愛しているって言わないと
一番大切なものすら見えなくなって 失くしちゃうよ
たとえ行動で示していても、うまく伝わらない
人は与えれば与えるほど豊かになるのに
自ら与えることをしたがらないね
争ったり 冷え切っている関係だって
もっとコトバで理解(わか)りあえるはず
気持ちいいくらい素直なコトバで幸せ与えよう
それは人だけに与えられたキーワード
もっと心のメッセージ コトバに乗せて伝えよう
人はみな惹かれあうもの なのに傷つけてばかり
たった一言だけで変わる人生もある
※繰り返し
東京ドームでのライブを夢見て
「実は、私の夢は、東京ドームでライブを開くことなんです。そのときは、いろんなテーマについて歌うでしょうが、それでも覚せい剤撲滅、青少年問題などのテーマは、自分の中核をなすものなので、全体の30〜50%を占めることになると思います。
どんな人であれ、自分は誰かに必要とされている、ということが実感されるような世の中にしていきたいですね。私が、自分のやりたい活動を展開した結果として、それが世の中の役に立つのなら、こんな嬉しいことはありません」。そう言った瞬間、杉山さんは、この日一番の笑顔を見せてくれた。
2009年2月、杉山さんはご結婚された。そして今、奥様がマネジャーとなって、二人三脚で全国を行脚する日々が続いている。長い長いトンネルを抜けて、ようやく、杉山さんの人生に曙光が差し込んできた今日この頃である。
普通に人生を送っていたら経験することのない壮絶な世界を見てきた彼だからこそできる仕事、それが、現在のライブ(講演+歌)活動なのだと改めて実感させられる。芸能界に限らず、薬物汚染が日本社会全体に広がり、同時に、イジメ、自殺、無差別殺人などがより深刻化していく今の世の中にあって、杉山さんの活動の意義がいかに大きいかは、改めて言うまでもない。
杉山さんの活動によって、日本社会に少しでも明るさが取り戻せたら、こんなに素晴らしいことはあるまい。1日も早くそれが実現することを願いたいものである。
→元優等生の暴走族総長は、なぜ覚せい剤中毒になったのか?――杉山裕太郎さん (前編)
嶋田淑之(しまだ ひでゆき)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
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