『闇金ウシジマくん』の関係者が語る、“優しい闇金”の真相(前編)(2/2 ページ)
“優しい闇金融”と呼ばれる違法ビジネスを営む輩が、水面下でうごめいているのをご存じだろうか。その実態はベールに包まれていたが、ノンフィクションライターの窪田順生氏が彼らの実態を明らかにした。
ヤミ金融が増えている要因
――ソフト闇金と正規の消費者金融、どこが違うのですか。
風俗で働いている女性が、ヤミ金からお金を借りている現場を取材したことがある。その女性は彼らのことを「ヤミ金」だという意識がなかった。一方のヤミ金は「金利は○○%で……」などと話していた。ところが、彼女は「そんな説明はいらないから、私は来週いくら返せばいいの?」と聞き、ヤミ金は「じゃあ、(元本に)3万円上乗せして返してくれ」といった会話をしていた。
その女性は10万円を借り、来週には13万円を返済しなければならない。少し考えれば高い金利であることが分かるが、彼女は彼らのことを「ヤミ金」だと思っていない。そんなことよりも、「早くお金を貸してチョーダイ」といった雰囲気が漂っていた。彼女からしてみると「普通の業者」という認識で、話をしているようだった。利用者からすれば、ヤミ金と正規の消費者金融を区分けしていないのではないだろうか。
またソフト闇金の中でも、金利が40〜80%で貸しているソフトな業者と、金利は高いが応対がソフトな業者――この2つのタイプがある。実際に、応対がソフトな闇金と借りている人の会話を聞いてみたところ、友だちのような感じだった。例えば「またギャンブル? しょうがないねえ」といった感じで話していることが多い。借りる側が「貸してよ」といえば、ソフト闇金はすぐに貸してくれる。「今週、返済がきついんだけど」ということであれば、「じゃあ、ジャンプ(繰越す)して、来週で」といった感じだ。
そうした会話の中に威圧的な言葉はないが、ルールを踏み外したときには「やるよ!」「長い付き合いだから、分かるだろう!」といった雰囲気も漂っていた(笑)。しかし基本的には信頼関係のようなものを築いていて、正規の業者と比べ“ウェット”な関係だ。こうした関係の中で、ソフト闇金は5万円や10万円といったお金を出し入れして稼いでいる。
そんなウェットな関係なので、借りている人は警察に駆け込むこともない。また事情のある人(多重債務者など)たちは他の業者でも相手にされないので、ヤミ金業者を裏切る可能性は低い。こういう人を何人か持っているだけで、ヤミ金業者は細く・長く食っていける……また最近では“太く食える”傾向が出てきた。
――ヤミ金融が増えている原因は、どのようなところにあると思いますか?
いろいろあると思うが、改正貸金業法の影響が大きいのではないだろうか。ヤミ金業者と話をして感じることは、「とても勉強しているな」ということ。例えば改正貸金業法の施行は、ヤミ金業者にとって“おいしい”と感じたのだろう。あるヤミ金業者は「昔の連中が帰ってきたよ」と言っていたほどだ。
多くの人は、ヤミ金業者はアウトローで、法律の向こう側で好き勝手なことをしている、といったイメージを持っているかもしれない。しかし世の中の流れをきちんと読んでいて、「こっちに困っている人間がいるから、こういうことをしよう」や「独居老人が増えているから、オレオレ詐欺をしよう」など、悪知恵が働く。改正貸金業法がすべて悪いとは思わないが、ヤミ金融が増えた原因のひとつになっているのだろう。
10年前にヤミ金を取材したときは、本当に分かりやすく、彼らの多くは金のネックレスを付けていたりしていた(笑)。いまのヤミ金は一見して、普通の姿。スーツを着ていて、少しガラの悪いサラリーマンかな……といった感じだ。
→『闇金ウシジマくん』の関係者が語る、“優しい闇金”の真相(後編)
窪田順生(くぼた・まさき)
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後全国紙記者、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして活躍。漫画『闇金ウシジマくん』(小学館)の取材協力を行う。また企業の報道対策アドバイザーも務める。
『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)が第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター』(講談社α文庫)がある。
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