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記者をコントロールできるって? ウソのような“最新テクノロジー”とは相場英雄の時事日想(2/2 ページ)

「記者と論調をコントロールすることができる仕組みがある」――。にわかに信じ難いが、実は本当の話だ。ある投資ファンドがテクノロジーを駆使して、記者を“操る”そうなのだが、本当にそんなことはできるのだろうか。

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記者をなめるな

 概要を聞き終えた際の筆者の率直な感想は、「記者をなめるな」だった。筆者自身、かつて為替や金利、株式市場の市況報道に長年従事してきたが、こうしたシステムで操れるほど市場は甘くない。

 例えば、大リーグ・シアトル・マリナーズのイチロー選手の新記録達成まであと何試合、あるいはあと何打席といったような予想には、この新興ファンドの最新システムは有効かもしれない。

 だが、例えば二日酔いの大臣が国会で誤った答弁を行った際、市場はセオリーを大きく逸脱して動く。また、速報担当の記者が早とちりし、通信社のフラッシュニュースが市場全体をミスリードするようなことも日々起こる。

 大臣の酒量、あるいは速報担当記者の仕事への習熟度をどうやって件の新興ファンドがシステム内で数値化するのか。筆者には大いに疑問だ。

 まして記者が会見の場で怒ったり憤ったりした際、それがどのように記事のトーンに反映されるかは、記者自身がキーボードや原稿用紙に向かうまでは分からないのだ。

 関係筋によれば、このファンドの最新システムは既に海外メディアの論調分析や実際の運用では実証済みとのこと。最新の運用データこそ見せてもらえなかったが、これを日本市場でも転用できるとファンド幹部は目論んでいるのだとか。

 賢明な読者ならお気づきだと思うが、このファンドの取り組みは芳しい成果を生まないと筆者は見る。仮にこのファンドの運用成績が業界紙の見出しを飾るような日が訪れたら、日本のメディアの質は相当劣化しているということになる。

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