なぜこの国に、“モミ消しのプロ”は存在しないのか(1):上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(4/4 ページ)
ジャーナリスト・上杉隆氏をホストとする対談連載1回目。事件などを追い続けているノンフィクションライター・窪田順生氏を招き、メディアの現状や課題などを語り合った。
日本にスピンドクターがいない理由
上杉 例えば英国の場合、首相報道官や補佐官は議員でない人が担当しています。議員だと政権末期になれば、次の政権に乗り換えるような裏切り行為が生まれやすいから。非議員だと政治家と一緒に辞めざるを得ないので、裏切り行為が生まれにくい。しかし日本のように、首相の周囲を議員で固めて、その議員の下に報道官を置いても、スピンドクターの役割を果たすことは難しい。
窪田 確かに構造的な問題がありますよね。
上杉 日本では無理ですよ。政務秘書官や官房長官クラスの人が、いわゆるスピンドクターの意識を持っていればいいと思います。日本でいえば、石原慎太郎都知事の特別秘書をしている高井英樹さんはスピンドクターの役割を果たそうとしています。あとは小泉純一郎元総理のときの首席秘書官だった飯島勲さんも情報をコントロールしようとしていましたが、スピンドクターとまでは言えませんでしたね。
これまでにもスピンドクターの役割を果たそうとした補佐官や官房長官がいましたが、外から見るとまったくなってなかった。なぜなら彼らは分かったフリをして、間違ったことをしていたから。名前はあえて言いませんよ……世耕弘成さんとは(笑)。
上杉隆(うえすぎ・たかし)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。富士屋ホテル勤務、NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年にフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。
『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など著書多数。
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