週刊誌が記者クラブを批判しない理由(2):上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(3/3 ページ)
行政や経済団体などが発表する情報を、いわば独占的に入手することができる記者クラブ。ほとんどの週刊誌は記者クラブに加盟していないが、なぜかこの問題を取り上げようとしない。その理由は……?
記者クラブの“既得権益”
上杉 自分の足で取材をしてきたジャーナリストは別ですが、多くのコメンテーターや政治評論家は、新聞記者からのオコボレをもらい続けていますよね。
窪田 僕は雑誌記者をしていましたが、新人のときは知り合いがいないので、自分の足で稼ぐしかなかった。しかし多くの先輩たちは、新聞記者からデータをもらって記事をまとめていましたね。そしてその先輩たちは新聞記者にギャラを支払っていました。
上杉 実はほとんどの週刊誌は、これまで記者クラブを批判したことがなかった。『週刊文春』でも僕が書くまでは、なかなかこの問題を取り上げようとしなかった。
窪田 雑誌の編集部も記者クラブにお世話になっているから、もちつもたれつで批判できないのでしょう。
上杉 しかしそんな不健全なことをいつまでもやっていてもしょうがない。ベテランのジャーナリストたちは記者クラブにぶらさがりながら生きてきたので、今後も自らの手で記者クラブを潰すということはないでしょう。
窪田 この“既得権益”はしつこそうですね。
上杉 見方を変えれば日本にスピンドクターがいないのは、記者クラブがその代わりを行っているだけのこと。
窪田 その通りです。記者クラブの中に、“プチスピンドクター”がたくさんいる(笑)。
上杉 彼らはジャーナリストのフリをしながら、実は権力側のスピンコントロールを無意識に行っているだけ。明確な意識を持っていないからでしょうね。
窪田 例えば政治家の囲み取材のときに、いきなり「イチローについてどう思いますか?」といったようなことを聞く記者がいる(笑)。あれは無意識に、政治家を逃がしているんでしょうね。
上杉 政治家や権力者側からすれば、そういった記者は“きちんとコントロールができている”ということになりますから。
続く。
上杉隆(うえすぎ・たかし)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。富士屋ホテル勤務、NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年にフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。
『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など著書多数。
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