“ジャーナリズムごっこ”はまだ続く? 扉を開かないメディア界(3):上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(2/2 ページ)
「政治家の中で、記者クラブの開放に最も積極的なのは小沢一郎幹事長」という、ジャーナリストの上杉隆氏。小沢氏といえば、記者会見を苦手としているはずなのに、なぜ記者クラブ開放に積極的なのだろうか。
小沢一郎幹事長が記者クラブを開放した理由
上杉 その後、東京の石原都知事や長野県の田中康夫知事(当時)、鎌倉市の竹内謙市長(当時)が記者クラブを開放しました。しかしマスコミが飛びついたのは長野県と鎌倉市だけ。なぜ彼らが石原都知事をスルーしたかといえば、東京都が記者クラブを開放したことは、さまざまな方面への「影響力がある」と判断したから。一方、長野県や鎌倉市が記者クラブを廃止しても「あまり影響はなく限定的だ」と思ったのでしょう。だからマスコミは田中知事と竹内市長には群がり、散々叩いた。
窪田 記者クラブは完全に閉ざされてきたわけではなくて、少しは開かれていたということですね。小沢さんはなぜ記者クラブを開放しようとしていたのですか?
上杉 秘書や同僚の人から聞いたところによると、小沢さんはいつも既存メディアから悪者扱いされてきたので、彼らに反論したかったそうです。しかし、なかなか分かってもらえない――。なぜならテレビや新聞が一旦流れを作ってしまうと、その流れを変えることは難しいから。なので小沢さんは、記者会見を開放することで自分のことを分かってもらえる雑誌メディアに訴えようとしたようです。
窪田 しかし小沢さんが、記者クラブを開放してきたことはあまり知られていないですよね。
上杉 そうですね。それこそ記者クラブにとっては自らの恥部につながるから。彼らは、小沢幹事長がもっとも情報公開に理解があるなんて本当のことを、死んでも書きたくないと思っているんでしょう。だからその代わりに叩き続ける。これ以上言うと、“小沢ヨイショ”になるので、ここらで止めておきます(笑)。
上杉隆(うえすぎ・たかし)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。富士屋ホテル勤務、NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年にフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。
『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など著書多数。
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