なぜギャップが生まれる? 環境都市とその実態:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
ドイツの環境政策に興味と持つ人であれば「環境首都」と称されるフライブルク市のことを知っている人も多いだろう。フライブルク市の先進的な環境政策を視察しようと世界各地から視察団が訪れているが、一体どのような街なのだろうか。
環境首都のイメージと実像
話の方向がちょっとずれるが、ここで環境首都のイメージと現実について付け加えておきたい。
視察に来る日本人からはよく「フライブルクはドイツ国内でも環境都市として有名ですか?」と問われる。実はこれ、いいポイントをついた質問であり、私は「日本で考えられているようには有名でない」と答えている。
このことは、決してフライブルクの環境取り組みの質が低いことを意味しない。ただ、フライブルクの他にも環境保全に取り組む地域は多数あり、それぞれがそれぞれの地理的・歴史的・社会的な特色を生かしながら環境政策を推し進めている。そういった意味でフライブルクだけが特別扱いされることはないということだ。
ではなぜ日本でフライブルクの知名度が突出しいるかといえば、それはフライブルクの情報を日本へ伝える研究者やメディアが多いからである。日本国内で得られる海外の情報、それも英語圏以外の情報は限られるから偏りが生じても仕方ないが、問題はその情報がメディアを介することでひずんでしまうことだ。
筆者が日本にいたころ抱いていたフライブルクのイメージは、例えば「道にチリひとつなく、プラスチックのゴミが出るファストフードなど一軒も見当たらない」という極端な環境都市像だった。実際に来てみれば、ゴミは落ちているしファストフード店も大繁盛で、イメージと現実のギャップに悩まされたものだ。
メディアにとってはフライブルクの環境首都イメージが強ければ強いほど商業的に好都合であり、傾向としてポジティブな面に焦点を当て続けることになる。筆者も大なり小なりその片棒を担いでいるわけだが、ネガティブな面を一切伝えなければ日本にいる方が偏ったイメージを持っても仕方がない。
百聞は一見にしかずのことわざ通り、だからこそ視察に来る意味がある。何事も疑えばいいというものではなかろうが、社会背景の検討や全体像を欠き良い事ばかり並べた情報には気をつけた方がいいようだ。
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