『大人の科学』の二眼レフカメラを作ってみた:-コデラ的-Slow-Life-
『大人の科学』vol.25に付録としてついてくる二眼レフカメラ。ブローニーでなく、35ミリフィルムが使えるということで、筆者も買って組み立ててみることにした。
忘れかけていたナニカを呼び覚ましてくれる学研『大人の科学』シリーズ。10月30日発売のvol.25は、何と二眼レフカメラが付録に付いてくるというので、さっそく購入した。
二眼レフカメラなら、すでに叔母の形見となった「RICOHFLEX Holiday」を持っている。もっと以前に興味があって購入した、中国製の現役二眼レフカメラ「SEAGULL 4B-1」もある。それなのになぜ今さら二眼なのか。
それは、35ミリフィルムが使えるからである。通常二眼レフカメラは、「ブローニー判」と呼ばれる、幅6センチの大きなフィルムを使う。これは現在も売られてはいるが、割高感がある。また現像もその辺の町のDPEでは難しい。まあ受け付けてくれないこともないが、ラボに出すので現像に1週間ぐらい待たされたりする。そんなわけで、35ミリが使える二眼レフカメラというのはお得感がある。
もっとも35ミリの二眼レフカメラというアイデアは、これが初ではない。現在も「blackbird,fly」というトイカメラが売られている。その昔は東郷堂産業というメーカーが作ったトヨカ35というカメラが35ミリで二眼だったが、これはボディが今の35ミリカメラのようなスタイルで、レンズが横に並ぶカメラだったそうである。
これまでカメラの修理ばかりをやってきたが、自分で作るというのはなかなか面白そうだ。さっそく組み立てに取りかかった。
ちっさ! でもなんかうれしい
書店で売られるようなサイズなので、それほど大きなモノでないとは思っていたが、箱からパーツを出してみるとやっぱり相当に小さい。
カメラを組み立てたことがある人はそうそういないと思うが、多くの人が悩む最初の難関は、シャッター構造を作るところであろう。ここは3つのバネを組み合わせて、3つのパーツが「かする」ような構造でシャッター動作を作っている。
組み立ては本に書いてあるとおりに進めていくだけだが、本の説明はバネの名称が間違っているそうである。サイズ違いで似たバネがあるので、公式サイトの解説を見ながら組み立てた方がいい。また同時にここがこのカメラのもっとも面白いところでもあるので、組み上がったらシャッター動作の仕組みをじっくり観察すると楽しいだろう。
このカメラが通常の二眼と違うのは、フィルムを巻き戻すための機構が付いていることである。ブローニー判はフィルムを巻き取ってしまってから現像に出すので、通常は巻き戻し機構がない。また、二眼レフカメラは高級機でなければ、きっちり1枚ずつフィルム送りをすることができないのだが、学研の二眼はフィルムのパーフォレーション※にかむスプロケット(歯車)があり、この回転でフィルム送りの様子が分かるようになっている。結構細かいところまで配慮が行き届いている。
レンズはプラスチックレンズである。オールドカメラでは考えられない素材だが、最近のトイカメラはほとんどプラスチックレンズだ。ガラスと違って傷や汚れに弱いので、素手で触ってはいけない。
撮影用の方は、開放ではなく絞りを入れた構造となっている。詳細なスペックは知るよしもないが、おそらくF16ぐらいではないだろうか。背景のボケを狙うなら絞りを外してもいいが、プラスチックレンズ1枚ではかなりフォーカスが甘いと思われるので、まずは絞りアリで試して見よう。
組み上がってみると、普通の二眼レフカメラの半分ぐらいしかないことが分かる。先輩の二眼レフカメラと記念撮影だ。左奥から学研二眼レフカメラ、RICOHFLEX Holiday、中国製SEAGULLである。
小寺 信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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