記者クラブを批判したら……最大の抵抗勢力が出てきた(4):上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(3/3 ページ)
「記者クラブを開放せよ」と訴え続けている、ジャーナリストの上杉隆氏。その一方で「記者クラブはあった方がいいんですよ」とも。なぜ上杉氏は記者クラブの「開放」を訴えながら、「あった方がいい」と言っているのだろうか。
記者会見の発言は公約になるので、ジャーナリズム側はそれを“武器”として使えます。ご存じの通り、石原都知事は東京にオリンピックを招致するため、国際オリンピック委員会(IOC)の総会に出席しました。実は彼の三選が決まった都知事選の記者会見のときに、僕はこのような質問をしました。「都知事は東京にオリンピック招致を公約に掲げていますが、もし2年後に落選したらどうしますか?」と。すると石原都知事は「そりゃあ男だからそれなりの責任を取りますよ。政治的に……」と言った。
こういった経緯があったので、選考会が開かれたコペンハーゲンに行ってきたのです。そして東京の落選が決まった直後の記者会見で、僕は「2年前にお約束しましたが、どうやって政治責任をとるのですか?」と聞きました。
なぜこのような質問ができるかというと、2年前の記者会見にちゃんと出席して、直接聞いていたから。記者クラブの悪いところは、人事異動でわずか2年前のことですら知っている記者がほとんどいなくなってしまうこと。多くの記者は数年で、ほかの部署に異動してしまいます。だから石原都知事の「公約」自体を知らないんですよね。
記者会見というのは、権力側の人間と記者との丁々発止の場でもあります。だから「記者会見には入れろ」と訴えていますが、「記者クラブには入りたくない」とも言っています。
上杉隆(うえすぎ・たかし)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。富士屋ホテル勤務、NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年にフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。
『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など著書多数。
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