取材現場では何が起きているのか? 新聞記者と雑誌記者に違い(5):上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(3/3 ページ)
大きな事件が起きたとき、新聞記者はどのような取材をしているのだろうか。その一方、主要メディアと比べ記者の数が少ない雑誌はどのような取材活動を行っているのだろうか。新聞記者と雑誌記者、その取材方法の違いについて、ノンフィクションライターの窪田氏が語った。
上杉 破っちゃいけないという規則に対して、記者は忠誠を誓いますよね。しかし「なぜこの規則はあるの?」とか「なぜ規則を破っちゃいけないの?」ということを考えようとしない。
土肥 記者クラブの中にいると、疑問に感じず、いわば洗脳されてしまうということですか?
上杉 記者クラブの中に5年以上もいると、もうダメになりますよ。
窪田 また日本の新聞社の場合、新卒で記者となり、そのまま記者クラブに放りこまれるケースが多い。なので記者クラブから放り出されて、「はい、自由に取材してください」と言われても、なかなかできない人が多いのではないでしょうか。
上杉 朝日新聞やNHKなどで記者を10年ほどやっていた人が、雑誌記者に転職したら、まったく使えないことが多い。例えば「広報が閉まっていたので、取材ができませんでした」といったことを平気で言いますから。そうした場合、広報を飛ばして、取材するのが記者の仕事なのに。
記者クラブにいる人たちを同業者と思うと腹が立つので、昔は「広報マン」だと思っていたんですよ。しかしそれも段々腹が立ってきたので、最近では「役人なんだ」と思っています。
窪田 ハハハ。
上杉 彼らのことを「役人」と思えば、きついことを言っても「ゴメンね。きついことを言って」といった感じで、心穏やかでいられる(笑)。
窪田 記者クラブに遅くまで詰めていても、「ご苦労さまです」と声をかけられるかも(笑)。
上杉隆(うえすぎ・たかし)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。富士屋ホテル勤務、NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年にフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。
『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など著書多数。
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