朝日新聞の支局には、こんな雑誌が置いてあった(9):上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(3/3 ページ)
海外の新聞では当たり前のように他の新聞を批判しているが、なぜ日本の新聞は他社の記事を批判しないのだろうか。また他社のスクープに対しても、“黙殺”するケースが多い。こうした日本の新聞社の“慣習”について、上杉氏が指摘した。
ジャーナリストとして強くなるには
上杉 あとこの問題で面白いことは、自分が思ったとおりに相手が右往左往するということ。あっちに逃げたので、こっちをつつくと、こちらの方向に逃げるのではないか――と。このような感じで、彼らはまとまって行動するのです。しかも手にとるように、相手の動きが読めるんですよ。
窪田 NHKにいて、鳩山事務所の秘書をして、ニュヨーク・タイムズで記者をして……上杉さんのような立場であるからこそ、この記者クラブ問題は追及できるのでしょうね。相手からすると、潰すこともできないし、黙殺することもできない。
上杉 そういう意味で言うと、窪田さんも同じですよ。雑誌で記者をして、朝日新聞に入り、PR会社に席を置く……。日本の場合、マスコミから権力側に行く人は多いですが、権力側からマスコミに来る人はほとんどいない。マスコミと権力側……お互いの手の内を知ることで、そこからいい意味での緊張関係が生まれてきますから。
フリージャーナリストでも権力側の手の内を知っていないために、権力側にコロッと吸い取られてしまう人も多い。権力側に入ってだけでは弱く、そこから出ることによってジャーナリストとして強くなっていくのです。
窪田 これまで名だたるフリージャーナリストが、大手新聞社やテレビ局の中に入ってしまいました。もちろん職業選択の自由なので、その人が選んだ道をどうこういうわけではないのですが、もしいまでも彼らがフリージャーナリストとして活躍していれば、もっと違った世の中になっていたかもしれませんね。(終わり)
上杉隆(うえすぎ・たかし)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。富士屋ホテル勤務、NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年にフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。
『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など著書多数。
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