NIKEフラッグシップストア原宿が目指す「店舗2.0」(3/3 ページ)
「ココカラ変ワル」をキーワードに創造されたという「NIKEフラッグシップストア原宿」。来店する顧客を「個」ととらえ、向かい合おうとしている姿から「店舗2.0」への挑戦を垣間見た。
Webと店舗のカスタマイズの違い
ただし、Webにおける「カスタマイズ」と、店舗における「カスタマイズ」の決定的な相違は、「人と人」の触れ合いの有無である。ハイテク化、自動化が進んで、いわゆる「労働力」を人の力に頼るところが少なくなった今、感性や創造力、機転など、「人にしかない」力をフル活用し、顧客の感動を創造することが店舗に求められている。
私の目がとらえる限りでいっても、今日の店舗の傾向は「ハイパー・カスタマイゼーション(「個」対応の徹底)」であり、「ハイパー・ローカライゼーション(地域対応の徹底)」である。ナイキ原宿とインテリゲンツィア・コーヒー・アンド・ティーに共通しているもう1つの要素は、コミュニティ(仲間)意識の育成だともいえよう。
ナイキ原宿は「女性オンリーのランニング・イベント」など、スポーツ志向のライフスタイルとロケーションを意識したコミュニティ・イベントを展開していく予定だという。この点も、コーヒーにこだわりを持つオーディエンスを対象に、バリスタ・クラスやテイスティング・イベント、焙煎所ツアーなどを企画、運営しているインテリゲンツィア・コーヒー・アンド・ティーと狙いを同じくする。
ただ単に「物を買う」「サービスを消費する」というだけではなく、そこにワクワク感や感動、人の温かみがあったほうがいいに決まっている。マウスのクリック1つ、あるいはケータイのボタン1つで、いつでもどこにいても物が買えてしまうという「便宜性」自体がコモディティ化している時代に、「店に来てもらう」ことの必然性を求めて店舗が変わりはじめた。コンサルタントという職業的興味からだけではなく、買い物好きの私としては、生活者にとっても楽しい時代になってきたと感じる今日このごろである。(石塚しのぶ)
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