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元朝日新聞の本多勝一が語る、2つの戦争と記者の覚悟(前編)(3/3 ページ)
かつて朝日の“スター記者”とも呼ばれた本多勝一氏。『カナダ=エスキモー』や『戦場の村』など数々のルポルタージュを報じてきた彼は、いまの新聞記者をどのように見ているのだろうか。
イラク側を報道することは解放戦線側より危険だったかもしれないが、やはり記者は死を覚悟して報道すべきだったのではないだろうか。これまで戦死した記者はかなりいるが、それは覚悟していたはず。ベトナム戦争のときも多くの記者は解放戦線側で取材しようとしていたので、その中に入ることに競争があった。中に入るためには、解放戦線側の窓口と交渉しなければならなかった。
彼らも責任があるので、なかなか記者を入れようとはしなかった。そこで私が考えたのはいわゆる“表玄関”ではなく、“裏口”から入っていったのだ。私は解放戦線と政府、それぞれが支配する境界線あたりのメコンデルタという村に潜入した。そして地方の軍と交渉を始めると、彼らから取材許可がおりたのだ。いまの戦争報道は昔とはかなり違っているが、「手段を選ばずに取材する」ということは昔も今も同じではないだろうか。
しかしイラク戦争の場合、フリーの記者以外、新聞記者は全員引き上げてしまった。これでは戦争そのものを報道することはできない。新聞にはイラク戦争のことが掲載されていたが、それは一次資料ではない。やはりジャーナリストというのは現場を直接見て、一次資料で書くべき。極論すれば現場以外はすべて二次資料ではないだろうか。
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