なぜ猫がビール箱に飛び込むのか?――UQ WiMAXのCM戦略(2/2 ページ)
最近見たテレビCMの中で、飛び抜けてインパクトが強かったものの話をしよう。猫が走っていき、ビールの紙箱に飛び込むというCMだ。その飛び込みっぷりがすばらしく、しかも面白いのだ。
3期にわたるテレビCM、それぞれの狙い
現在放映されているUQ WiMAXのCMは、「入ってる? 箱の猫編」と「入ってる? ビリヤード犬編」の2本。同社ではサービス開始以来、3期にわたってテレビCMを展開している。
第1期は、6月15日からスタートした「ルービックキューブ編」「拍手編」「ボール編」の3本。これらはいずれも、登場感を打ち出すこと、スピードを訴求することを目的に作られた。「GET SPEED」「GET WiMAX」のキャッチコピーはここからスタートしている。
第2期のCMはWindows 7(キーワード)と、WiMAX機能を搭載したPCの発売タイミングに合わせて、10月22日から放送が始まった。こちらは冒頭に書いた「なわとび編」と「スタッキング編」の2種類。なわとびをする少女も、スポーツスタッキングをする少年も、視聴者が動きを追えないほどのスピード。ここでもCMの目的はスピードを訴求することであり、キャッチコピーは「GET SPEED」「GET WiMAX」だった。「それともう1つ、WiMAXという言葉を覚えてほしいという狙いもありました」(西山氏)
第3期、現在放映している猫&犬のCMでは、「PCにWiMAXが“入っている”」ことを訴求ポイントに据えている。だからこそ猫はビール箱に飛び込むし、犬はビリヤードの玉を穴に入れているというわけだ。現在UQ WiMAXのサービスエリアは首都圏と京阪神が中心で、全国で見ると使えないエリアも多い。「買うならWiMAXが入っているPCを、というのが現在のメッセージです。今はまだエリアでなくても、将来を考えればWiMAX内蔵のPCを買うべき。そういう意味があり、キャッチコピーを『未来を買おう』としています」(西山氏)
“YouTubeっぽさ”で大手通信事業社と差別化
実は初めてUQ WiMAXのCMを見たとき、インパクトの強さやスピード感に加えてもう1つ筆者の印象に強く残っていたのが、独特の「手作り感」だった。女の子が縄跳びをしているのは彼女の自宅の前だし、猫のCMは飼い主が投稿したホームビデオ。あまりお金をかけているようには見えない。大手広告代理店の仕切りで、芸能人が出てくる華やかな他社のCMとはまったく異なり、スタッフがあまりコストをかけずに、アイデアで補って作っている印象を受けたのだ。
「実際そうなんです」と西山氏は話す。「CMの猫は香川の猫で、飼い主さんがYouTubeに投稿したものをそのまま使っています。逆にルービックキューブ編などは、我々が海外へ撮影しにいったのですが、撮った動画の画質をわざと落として、YouTubeっぽく仕上げてCMに使っているんです」
現在、UQ WiMAXのユーザーは9割以上が男性。PCにくわしく、ITリテラシーの高いユーザーが中心だという。現在同社が狙っているのは、新しいユーザー層の開拓だ。「テレビCMでかわいらしい動物を主役にしたのは、これまでと違いITリテラシーの高くない層、女性にも訴求したいと考えたからです。12月18日からは、犬と猫のCMに関連して、Amebaブログの会員全員を対象に『あなたの見た、動物のユニークな行動を教えて!』という口コミを集める企画を実施しています。またこれから春先にかけては、女性や学生に訴求するCMをやりますよ」
CMギャラリーを見ると分かるが、UQコミュニケーションズのCMはいずれもユニークでインパクトの強いものばかりだ(参照リンク)。次に必要なのはWiMAXという名前を覚えても「WiMAXって何?」と思っている層に対して分かりやすく答えられることなのかもしれない。
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