だから週刊誌は売れない……そう感じた事例:相場英雄の時事日想(2/2 ページ)
購読部数や広告収入の減少により、このところ明るい話題がない週刊誌。しかし低迷の原因は、本当に外部要因だけなのだろうか。筆者の相場氏はあるネタのいきさつを知り、低迷の原因は「作り手側にもある」という思いを強くしたという。ネタのいきさつとは……。
取材に行かない若手
「あいつら、1日中編集部にいるんだよな」――。
これは某大手週刊誌の編集幹部の弁だ。あいつら、とは若手の編集者や記者を指している。電話やメールでの取材が中心で、「人と直接会ってネタを引いてくるという作業をとにかく嫌がる」というのだ。
筆者にも同じ様な経験がある。古巣で毎年新人記者が入社するたび、記者クラブで決まりものの原稿ばかり処理し、外に出たがらない若手が急増したのだ。中には、ネット上の掲示板からネタを「コピペ」し、無断で原稿に引用するような輩も現れ、社内で大問題に発展する様なケースすらあった。
筆者は、週刊誌の編集者・記者、あるいは契約ライター諸氏の大半が誠実に取材を続け、俎上(そじょう)に上る相手と日々ギリギリの駆け引きを行っていることを熟知している。ただ、先に触れたように、相手と直接接触し、感触を確かめるという基本作業を怠っている向きも確実に存在するのだ。
筆者は若手だけを指弾しているのではなく、こうした危ない記事作りを容認、あるいは黙認してしまっている編集部の体質にも少なからず問題があると考える。
広告の減少と部数の減少を食い止めるため、刺激の強い記事を書く。こうした方針で各社の週刊誌は懸命に歯を食いしばっている最中だ。だが、刺激の強い記事をお手軽に濫造したとしたら、それは一層の読者離れ、ひいては購買部数の落ち込み、最終的には広告の枯渇、休刊(廃刊)という負のサイクルを転げ落ちることを意味する。
筆者は現役記者時代、取材経費を捻出するためにアルバイト原稿で各社の週刊誌には散々お世話になってきた。いまさら最上段に構えて批判めいたことを書く資格がないことは重々承知しているのだが、最近の取材の稚拙さには正直、危うい一面を感じた。
週刊誌は新聞やテレビが掘り下げない告発記事、調査報道が使命だ。作り手内部の劣化は、最小限に食い止めるべき時期にきているのではないだろうか。
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