「記者クラブを開放せよ」と言ってきたが……何が変わったのか?:上杉隆×小林弘人「ここまでしゃべっていいですか」(3)(4/4 ページ)
「メディアを存続させることは難しいぞ」と訴え続けてきた小林弘人氏。「記者クラブを開放せよ」と言い続けてきた上杉隆氏。2人がこう語ることで、周囲の人はどのような反応を見せたのだろうか。
上杉 外務省や金融庁が記者会見を一部開放しただけで、「大転換だ」という人もいます。しかし海外メディアからすれば「あまり変わっていない」状態なのです。
政権交代が行われて、日本の主要メディアは「総理官邸の記者クラブが大きく変わった。特派員協会や雑誌協会から15人の記者を入れた。もう完全にフルオープンです」と言っている。しかし出席できるのはカメラマンと質問権のないオブザーバーという立場の記者ばかり。それを主要メディアは「記者クラブが開放された」と誇っている。
産経、朝日、毎日は社会面で「記者クラブ開放」と小さく書いていました。しかし、それを読んで「えっ!?」と思った人も多いのではないでしょうか。多くの人は「記者会見って開放していなかったの?」と思ったはず(笑)。また「記者クラブってナニ?」と感じた人も多かったでしょうね。
この10年、私は記者クラブの開放を訴えてきましたが、日本の主要メディアからは“黙殺”されてきました。小林さんも相当早い時期から「これからのメディアはインターネットだ」と訴えてきて、苦労されたのではないでしょうか。ちなみに私の場合は“非国民扱い”されていますが(笑)、小林さんはどうですか。
小林 確かに。でも僕の場合、まだ普及していないモノの可能性を示唆したり、それでビジネスを立ち上げてきたので、非国民扱いというよりは、存在していないのに等しいのではないでしょうか(笑)。
→第4回へ続く。
上杉隆(うえすぎ・たかし)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。富士屋ホテル勤務、NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年にフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。
『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など著書多数。
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