大手新聞の有料Web版への動きは、“正しい”ことなのか:上杉隆×小林弘人「ここまでしゃべっていいですか」(9)(3/3 ページ)
2010年春、日本経済新聞社は有料のWeb版をスタートさせる。しかしこうした動きは“正しい”ことなのだろうか。業界関係者の間からは「デジタルの世界で自殺するようなものだ」といった声も出ている。
上杉 フリーのジャーナリストが、そうしたメディアとパートナーを組むのはいいかもしれない。日本だと「論」になってしまうんですよ。書いている人がいばっちゃって。
小林 そうですね。記者クラブの話とも関連しますが、どうしても一次情報に触れられないことが大きいでしょうね。ただし、このあたりは「ニコ生」や「J-CAST」のように突破できなくもないでしょう。これから大手新聞社は電子版に移行していきます。彼らは課金制にするでしょうから、逆にこうした新興メディアでどんどん情報を出せばいいのではないでしょうか。
上杉 そこは狙い目ですね。大手新聞社の逆をやればいいわけですから。
小林 コンテンツを有料課金にし、検索などで引っかからないように囲うことを「ペイウオール」化と呼んでいますが、逆のことをするだけで、彼らのシェアを奪っていくことは可能でしょうね。
大手新聞のやり方について、「デジタルスーサイド」と批判する人がいます。「デジタルの世界で自殺するようなものだ」という意味でしょうが、大手新聞社のこれからの動きに対し、このようにも皮肉っています。「新聞社はやっと正しいことをしようとしている。絶対、ペイウォールにすべきだ」と。新聞社以外のニュース系ブログメディアはワクワクしていますよ(笑)。
上杉 いまはものすごいチャンスなわけですね。
小林 インターネットが商用接続されてから、ずっとチャンスだと思います(笑)。
上杉 そっか……どうしようかな。
小林 スポンサーを見つけてきましょうか(笑)。
上杉 私はシステム関係は苦手ですが……。
小林 アイティメディアのサーバを間借りしては?
上杉 ではアイティメディアに、最初のスポンサーになっていただいて(笑)。
上杉隆(うえすぎ・たかし)
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。富士屋ホテル勤務、NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年にフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。
『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など著書多数。
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