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コラム

オレが書けば企業の株価は上がる――。とある外資メディアの“スクープ合戦”相場英雄の時事日想(2/2 ページ)

日本のメディア業界が苦しい立場に立たされている――。しかし苦しいのは日本に限ったことではなく、米国では老舗新聞社が相次いで破たんに追い込まれている。業界を取り巻く環境は悪化の一途をたどっている中、一部の外資メディアで危険な兆候が強まっているという。それは……?

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自滅への道

 実際に別の関係筋は「最初から結論ありき、にしか見えない記事を見かけることが多い」と指摘する。社内評価アップに執着した記者が、株式市場への影響力が強い証券会社や著名アナリストの分析を都合の良い方向に組み合わせて記事に仕立て上げた流れが透けて見えるのだという。

 また、大手企業に対する取材も株価のみを意識したものに偏りがちで、「記者が手張りして(あらかじめ売買を手がける行為)特定銘柄の記事を書いていた大昔の証券業界紙のような、下品な取材が多くなっている」(某大手銀行)とまゆをひそめられているのだ。

 筆者が現役記者だった4年前まで、このメディアはたびたび誤報を出すことで知られていた。記者のトレーニング体制が不備なため「裏取り(事実確認)」が甘い向きが少なくなかったからだ。このため、株式市場や外為市場の最前線で働く第一線のディーラーたちの受けは必ずしも良くなかった。ただ、金融関係者の間では、同メディアが提供する各種データのカバー範囲の広さや使い勝手が重宝されていたことから、一定の契約数を保ってきた側面がある。

 翻って現在。顧客企業の多くはリストラの一環としてこのメディアとの契約を減らし、「1人ずつに与えられていたIDや端末は、数人単位の共有になった」(某外資系証券調査部)。こうした環境下で「インセンティブ」を伴ったスクープ作戦がどういう結果をもたらすか。賢明な読者の多くは既にお気付きだろう。青臭い言い方になるかもしれないが、メディアの存在意義は伝える内容の正確さ。この真理に逆行するのは、自滅への道を固めるのに等しいのではあるまいか。

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