「一切ない」から「ご賢察ください」まで、プレスリリースの名・迷コメント:相場英雄の時事日想(2/2 ページ)
行政や企業などからメディア向けに、毎日膨大な量のプレスリリースが配られている。しかし発するコメント内容が、「分かりにくい」といったケースも多い。今回の時事日想は、ちょっと変わったプレスリリースを紹介する。
プロもあきれた迷コメント
「長年記者をやってきたが、あのコメントを読んだ瞬間は開いた口が塞がらなかった」(大手紙記者)――。
つい最近、記者や広報担当者を唖然とさせた1枚のリリースがあった。前社長と現経営陣の対立が問題となっている富士通が3月6日に発表したリリースがそれだ(関連リンク)。
「人事が深い」と長年言われ続けてきた同社の内情の詳細は他稿に譲るとして、ベテラン記者を仰天させたコメントとは、『発表時点では全ての事情についてお伝えしなかった事については、事情ご賢察の上ご理解いただきたく存じます。』という部分。要約すると、「前回の人事発表はいろいろと社内の事情があり、関係各位をミスリードすることになってしまいました。その辺をお察しください」となる。
富士通はれっきとした東証1部上場企業であり、個人投資家はもとより内外の機関投資家の注目度も高い銘柄であることは言うまでもない。大企業が発したお家騒動に関するコメントが「お察しください」だったので、担当記者だけでなく、「元々株主を軽視する企業だったが、今回のリリースは論外」(外資系運用会社)と大口の投資家からも猛烈な批判を食らったわけだ。
ちなみに、広報・IRの助言を専門に扱っているコンサルタントからは「評価する以前のコメント」との言葉が漏れてきた。先に本稿で『トヨタの“ブレーキ問題”がここまで拡大したワケ』と題するコラムを配信した。その中で、広報のプロ達が用いる「悪い実例リスト」の存在を指摘したが、この富士通の迷コメントも当然このリストに加えられたのは言うまでもない。
Web上のニュースサイトには、従来の新聞よりも早く企業が発するコメントがアップされる。企業がどんな意図でコメントを発表しているのか、いろいろとその裏側を探りながら読み進めるのも一興かもしれない。
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