テクノロジー+エコロジー=景気に左右されない観光戦略:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
「特別な観光スポットがなければ、観光客なんて来るわけがない」と考えている人も多いのでは。しかしドイツのカールスルーエ市は観光資源がなくても、毎年多くの観光客が訪れるという。今回の時事日想は、同市の観光戦略を紹介したい。
――カールスルーエ市には日本からも街作りやエコロジーをテーマとした視察・見学者が訪れますね。
シュトルク 路面電車と鉄道を融合させた「カールスルーエ市モデル」は、都市交通の新しい形として世界にその名を知られています。またカールスルーエ市のビオトープやクラインガルテン(市民菜園)は国内のみならず海外からも注目されていますし、再生可能エネルギー関連の見所も数多くあります。
また、ライン川の自然を生かしたエコツーリズムとカルチャーを組み合わせた観光プログラムの整備も進めています。例えばEU(ヨーロッパ連合)の特別プロジェクトとして、カールスルーエ市を含めたライン川周辺地域の環境保護とエコロジーをテーマとした「体験型のエコツーリズムプログラム」を企画しています。今後は、受身型ではない体験型の観光とグループ客の誘致に力を入れる予定です。
景気の波に左右されにくい観光体質
筆者自身、カールスルーエ市に来る日本の視察・見学グループの通訳を務めることがよくある。テクノロジー関係、街作り、都市交通、ビオトープ、再生可能エネルギーの分野が多く、カールスルーエ市の観光振興に一役買っていると言えそうだ。
観光振興といえば、いかにして観光スポットを整備するかという画一的な考えに陥りがちだが、カールスルーエ市のようにテクノロジーやエコロジーを観光資源とすることも十分可能だ。場合によっては景気の波に左右されにくい観光体質を作ることもできる。余暇を楽しむための観光資源に乏しい自治体であっても、その特徴をうまく生かせればツーリズムの可能性は大きく広がる。カールスルーエ市の観光戦略はその好例であろう。
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