“分業”化するビジネス、“非分業”化する家庭:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
ビジネスでは“分業”化が進む一方、家庭では“非分業”化が進んでいると主張するちきりんさん。家庭が非分業化した結果、少子化などの問題が生まれているようですが、それを解決するにはどうすればよいのでしょうか。
少子化を食い止めるためにどうすればいいのか
では少子化を食い止めるには、どうすればいいのでしょうか? 解は「楽しい分業を可能にする」か、「成果の落ちない非分業を目指す」のいずれかです。
「楽しい分業」は核家族では限界があります。夫婦2人では分業の選択肢は「1人が仕事に専念、もう1人が家事・育児に専念」しかありえません。たまたまニーズの合う男女が結婚する場合のみなりたつ方法です。
もう1つの「成果の落ちない非分業」はどうでしょう。
こちらは、職住近接、在宅勤務推進、職場での保育園の完備(病児保育含む)、男女とも有給休暇や育児休暇を取得できる環境、安心でおいしい手作りご飯がすぐに手に入る環境、そして子育て費用の支援、などが整えられれば可能になります。
非分業で親が2人とも働いていても、家事や育児を分担しつつ子どもが2人でも3人でも育てられるようになれば、子どもの数を増やしたい人はたくさんいると思います。しかしこれを実現するには、男性を含めた企業社会の働き方の変革、さまざまな家事や子育てのサポートビジネスの普及、公的資金による育児支援などが不可欠です。
実際、フランスなど少子化を克服しつつある国の多くがこのアプローチで成功しているのですから、可能性はあると思います。また関連のサポートビジネスは新たな内需産業としても、雇用創出の源としても効果が期待できます。
間違えてはならないのは、「家庭はもう“分業”の世界には戻らない」と理解することです。保守派のおじさま方の中には「女が働くから子どもが少なくなる」「女は家庭に戻って子どもを産むべき」という意見もまだ存在しています。これは「分業に戻れ」という意見です。
しかし、時代の時計の針を戻すのは不可能です。それを言っている限り、少子化は止まらないでしょう。これからは家庭の非分業を前提として、それでも子どもを3人持てるインフラや制度を整えることにぜひ力を注いでほしいものです。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。
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