貧困ビジネスとは何か? 低所得者を喰う者たち(前編)(3/3 ページ)
貧困ビジネスというのをご存じだろうか。これは湯浅誠氏が考えた“造語”で、「低所得者をターゲットにし、貧困を固定化する役割を果たすビジネス」を指す。その代表的なものとしてヤミ金などが挙げられるが、中でも湯浅氏は「住宅」に着目している。その理由は……。
貧困ビジネスの理屈
貧困ビジネスの理屈というのは、基本的に2つある。1つめは「嫌だったら、(サービスを)利用しなければよかったじゃないか」というもの。よく「本人は『利用しない』という選択肢があった」と言ってくるが、これは貧困ビジネスを利用する前の立場に立った理屈。もう1つは「嫌だったら、(サービスの利用を)止めればいいじゃないか。でも止めたら、困るのはあなたですよ」と、利用後の立場に立った理屈。
例えば、悪質な不動産会社は「(ゼロゼロ物件を利用することで)低所得者は喜んでいる。契約のときにきちんと説明しているので、嫌だったら断ればいい」と主張してくる。またヤミ金も、同じようなことを言ってくる。実際にお金を借り、助かったケースを例に挙げ「ほら、役に立っている人もいるでしょう」というのが、彼らの理屈だ。
この2つの理屈は貧困ビジネスに常について回ってくるが、実は人身売買でも同じようなことが起きている。例えば海外から売春をするために来日した人たちのことを、悪質業者はこのように言う。「本国にいるよりお金はたくさんもらえるし、『良かった』という人がたくさんいる。嫌だったら、来なかったらいい」と。一方、本人に対しては「お前はココを出て行けば、本国に強制送還させられるぞ」と脅したりする。
本人は拾ってもらってありがたいと言っている。嫌だったら、辞めればいい――という彼らの理屈はおかしい。もし時給100円で働いていても「0円よりましだ。それでいい」と本人が納得していれば“問題ない”というのであれば、最低賃金もいらなくなり、労働法上の規制もいらなくなる。彼らの理屈を突き詰めていくと、こうした荒唐無稽の話になるのだ。
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