コラム
ニホンのモノづくりは負けない……そんな自信を失うかもしれない:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
中国やインドなど新興国の台頭が目立ってきているが、「日本は『物づくり』では負けない」と思っている人も多いのではないだろうか。しかしそんな自信も長続きはしないのかもしれない。その理由は……。
こうした変化は既存企業にとっては当然望ましくない変化である。日本が30年前に欧米企業を凌駕した分野よりもはるかに多くの分野で新興国がリードするようになっているし、そのスピードもはるかに速い。当然、先進国の企業は激しい価格競争を挑まれることになる。
それでも先進国が製造分野での失っても、技術革新では先進国がリードを保つと主張する人々もいる。しかし新興国は、単にイノベーションの分野にも進出するだけでなく、既存の産業基盤を揺るがすようなコスト低下(価格破壊といったほうがいいかもしれない)の津波を引き起こしている」
そして基本的にはこれは先進国にとってもいいことだというのがエコノミスト誌の主張のようだが、先進国の企業がこういった新興国の挑戦にどうやって生き残ることができるかは別の問題だ。
危機感が欠けている
日本の自動車産業はビッグスリーとして世界に君臨していた米国の自動車会社を凋落させた。日本のテレビによって、米国のテレビ産業は壊滅した。そして今、日本の製造業は、新興国に追い落とされそうになっていると言っては、言い過ぎだろうか。
こういった状況を考えると、日本の政治家はもとより、経営者も官僚も危機感が欠けているように見えてくる。やたらに騒ぎ立てるアラーミストにはなりたくないが、20年もの時を失って、気がついたら中国やインドの津波に呑み込まれていたというのでは、あまりにも情けないと思う。
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